「地元でできるんで、いつもとは違った感じですが、グラウンドに立ったら一緒かな」と言いながらも、広島の血が騒ぐのか、広島ファンの熱狂的応援スタイルにも好意的な捉え方で「スクワットっすね。スクワット応援のイメージ、できています」。広島の名物応援は敵とすればその迫力が脅威になるはずだが、生粋の“カープ男子”の柳田はそれをむしろ楽しみにしているかのように映るから不思議だ。
その柳田の“ダブル・フランチャイズ”とも言える「広島」と「博多」の対決は、69回目の日本シリーズでも初の顔合わせとなる。ソフトバンクはレギュラーシーズン2位から、CSを勝ち抜いて2年連続のシリーズ進出。工藤監督はディフェンディング・チャンピオンとしての強い決意を示した。
「やはり“思い”で負けないことが大事かなと思います。シーズン2位っていう中で、ほんのわずかな差で勝ってこられたと思っていますし、そういう中で、こうやって素晴らしい機会を与えていただけた。そこにしっかりと自分たちの力を注いで、日本一になるんだという思い、絶対に広島さんには負けないんだという強い思いが絶対必要だと思っていますし、最後のアウトがコールされるまで、選手たちは諦めない。白球をしっかり追って戦い抜くっていうところは、すごく大事かなと思います」
西武のエースだった工藤監督が、日本シリーズで広島と対戦したのは1986年。初戦の引き分けの後、3連敗を喫しながらも4連勝で日本一。1勝2セーブに、サヨナラ打も放ってMVPにも輝いた。立場もユニホームも変わったとはいえ、その32年ぶりの歓喜を再現できれば、パ・リーグの球団として現在のセ・リーグ6球団をすべて倒した初のチームとなる。
ソフトバンクは、その新たな章を球史に刻むことができるのか--。2018年のシーズンを締めくくる頂上決戦は10月27日午後6時半、その火ぶたを切る。(文・喜瀬雅則)
●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。