幼稚園での「教育」に羨望の眼差しを向ける保護者も多い。前出の猪熊さんも「共働きでも幼稚園に入れたい」と強いこだわりを持つ親に出会ったり、「保育園で遊んでばかりで大丈夫でしょうか?」と質問を受けることもあるという。
「保育園は教育をしないというのは誤解です。幼少期の子どもにとって、仲間と一緒に自由に楽しく遊ぶ中で、何かを発見したり、協力して調べたりすることで、非認知能力が磨かれていきます。逆にフラッシュカードやドリルによる『学習』や、体育や音楽など早期教育をアピールする園も多くありますが、子どもの発達や気持ちを無視していては、悪影響にもなりかねません。詰め込みや訓練になっている園は避けたほうがいいでしょう」(猪熊さん)
さらに、2010年には『幼稚園教育要領』と『保育所保育指針』の保育のねらいが共通になり、18年度からは3歳以上の子どものには『教育』が統一され、両者の垣根は低くなっていると指摘する。
前出の普光院さんも「保育所で子どもがのびのび生き生き過ごしているなら、幼稚園の教育的なカリキュラムや習い事を羨ましがる必要はありませんよ」とアドバイスする。
「乳幼児期の子にとって大事なのは、主体性や人格が尊重されているかという点です。それは通っているのが保育園か幼稚園か、どんな習い事をするかではなく、一人ひとりの力を認めて導いているか、周囲の大人の関わり方が大事なのです」
共働き=保育園、専業主婦世帯=幼稚園という構図は過去のものになりつつある。憧れや外から見たイメージにとらわれず、親子にとっていい施設を選ぶことが必要だ。(AERA dot.編集部・金城珠代)