グーグルが掲げる優秀なマネジャーの行動要件10項目の一つに「部門を越えたコラボレーション」があります。それができないと新しいことも生まれないし、競争力も失ってしまう。つまり生産性が低いというわけです。そして、どのレベルのコラボレーションが一番大事かといえば、やはりマネジメント層なのです。要するに、縦割りを越えているのが本当の「経営チーム」ということ。縦割りのままの役員会は、冒頭で言ったように、単なる「部門長の集まり」でしかなく、生産性を高めることは到底できないでしょう。
部門長同士がちゃんと話し合える、お互いに深い話、腹を割った話ができる一つのチームになってないと、会社は成り立ちません。たとえば、営業部長の2つ下のレベルのAさんが製造の同じレベルの人に迷惑をかけているというとき。製造部長は営業部長にすぐ伝えないといけないでしょう。「Aさんはすごく迷惑をかけています。なんとかしてください」と率直に。それなのに日本の会社では、「最近どう? そういえばAさんってどんな人?」などと、飲みながら遠回しに探りを入れるといったパターンがありがちです。しかも肝心の問題児のことは指摘できない……。
本当は数十秒の立ち話で済むはずですね。「Aさんが迷惑をかけています」「どんな迷惑ですか?」「BさんとCさんに情報をシェアしてくれない。打ち合わせに時間をとってくれない。なぜですか?」「Aさんはめっちゃ忙しい。いまはこういうプロジェクトにかかわっているから。ごめんね、本人に言っておく」というぐあいに。多くの日本企業の管理職や経営層は、こういうスピード感で会話することがとても苦手なのです。
これは、いわゆる文化の問題ではありません。要は、単に「意思決定できない」ということ。日本企業でも成功しているマネジメント層は独りよがりなスタイルを超えて、速やかに問題解決のプロセスを踏んでいます。それができないのは経営者、管理職として失格だと思いますね。しかも、一つのチームとしてメンバー全員がそうしないと意味がないわけです。
部門長みんなが経営戦略を把握して、たとえば営業部長であれば、製造部長に「お客さんからこういう声がきているから、こういう商品じゃないと売れなくなっている」とすぐに提案する。製造部長も「こういう商品なら低コストで作れる」とすぐに応答する。こうした猛スピードの情報交換ができなければ、会社はヤバイですよ。
日本の大手企業のあちこちで不正なども発覚していますが、社内のすり合わせや「忖度」に時間をかけず、経営者がちゃんとした経営チームをつくるようになれば、そうした問題も起こらなくなるのではないでしょうか。(構成/高橋和彦)