風間のもとに後日、「実は私も代表選には白紙で投票しました」というメールが届いた。「やるべし」からだった。

「だめ押しのひと言をいった責任で、私はやめられませんでした。ただ、今の人が総理をつづけることと、私が投票することのどちらが正義に反するかとか、色々考えてわからなくなってしまったんです」

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 以上の「作り話」のアイデアを思いついたのは3カ月前だ。書いたからといって、自民党総裁選の行方に影響を与えることはないだろう。だとしてもその前はさすがに不謹慎だと思い、国会議員がいる政党のどこかで実現可能性があるのか調べることも含め、一切の作業をやめてしまった。

 それでも結局書いたのは、ある政治目標を本気で実現するには、より発想をふくらませなくてはいけないのではと、荒唐無稽な例で問いかけてみたかったからだ。こうした「偽装党員」は許されないと私は考えている。

 私は都内の病院を21日に退院し、44時間後の23日に再入院した。病状はともかく「原稿は毎回、最終回のつもりで」と意を新たにしたところで、これまでやったことがない「作り話」に挑んだかたちだ。

 それはそれでへそ曲がりな私らしい気もする。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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