東京五輪野球 台湾、中国に続き豪州も…辞退相次ぎ「五輪とは呼べない」と嘆きの声

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国立競技場の前にある五輪マークのモニュメント(c)朝日新聞社

 メキシコで開催される野球の東京五輪世界最終予選に出場予定だったオーストラリア代表が予選出場を辞退することを発表した。

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 オーストラリア代表でチーフエグセグティブを務めるグレン・ウイリアムズ氏が「新型コロナウイルスが蔓延する世界で、最終予選に出場すると考えた時に常に大きな困難がついてまわる」と出場辞退の理由をオーストラリア野球連盟の公式ホームページでコメント。すでに台湾、中国が辞退を決めており、世界最終予選はオランダ、ドミニカ、ベネズエラの3カ国で出場権を争うことになる。

 東京五輪で野球担当のスポーツ紙記者は渋い表情を浮かべる。

「東京五輪の本大会に出場できる国は6つだけ。野球は世界ではマイナースポーツで、競技に力を入れている国が少ない。しかもコロナの影響でオーストラリア、台湾、中国が参加していない。予選を含めてこれ程の小規模な大会だったら五輪とは呼べないですよね…」

 野球とソフトボールは08年北京大会を最後に実施競技から除外されたが、ソフトボールと国際統括団体を統合するなど「1競技2種目」としてアピール。東京大会で「野球・ソフトボール」として3大会ぶりに復活した。ただ、「盛り上がっているのは開催国の日本だけ」と冷ややかな声も聞かれる。

 米国のロサンゼルスに駐在する通信員は東京五輪で野球に対する現地の関心が薄いことを指摘する。

「日本では侍ジャパンが金メダル獲得できるかで話題になっていますが、米国はトップのメジャーリーガーたちが出場しないので野球ファンの間で話題になることが少ない。エンゼルスを戦力外になり、ドジャースに入団したプポルスがドミニカ代表で出場するかどうかで盛り上がったぐらいです。そもそも五輪で真剣に金メダルを目指しているのはアジアの国ぐらいです。米国や中南米の国はメジャーリーグのシーズンの方を大事にしているのでそこまでの熱はない。野球の国際大会はWBCがあるし、五輪は以前のようにアマチュアの選手だけが参加する祭典にした方が、熱を帯びるのではないでしょうか」

 また、米国市民の間ではワクチンの接種がまだ行き届いていない日本での五輪開催に不安な声が多いという。

「米国と比べて日本はワクチン接種のペースが遅れたので、『選手やスタッフを日本に渡航させて大丈夫なのか』と不安に感じる人たちが少なくありません。米国ではコロナ感染が急増した時期があったので、異国の地にいった選手たちが変異株に感染するのではないかと敏感になっています。日本人が思っている以上に海外の人達はコロナ感染に対して敏感です」

 東京五輪開催まで1カ月半を切ったが、コロナ感染のリスクを考慮し、出場辞退の意向を表明する国が今後も出てくる可能性がある。

 SNS、ネット上では、「こんなんでオリンピックやる意味あるの?たとえ金取ったとしても、それが本当の実力で取ったのか解らないし、未来でも言われ続けると思うんだよね。『東京五輪で金? ああ、あの実力選手がこぞって辞退した大会ね』。こんなふうに言ってそう」、
「もう既に五輪ではなくなっている。こんな種目が続出したら、五輪をする意味がないではないか。何のためにやるのか。改めて答えてほしい」などのコメントが。

 コロナが収束していない中、五輪に出場することに葛藤を覚えるのは当然だろう。出場を辞退した国、アスリートの意向も尊重しなければいけない。(梅宮昌宗)