東 車いすの人が避難所へ入るのをやんわり断られたり、自閉症でパニックを起こした子どもに対し「うるさい」という声があったり、トランスジェンダーの人がトイレや更衣室に困ったり。さらに、あるおばあちゃんが、「足手まといになるから」と、おじいちゃんのお墓の前で自殺したという話を聞いて、いても立ってもいられなくなりました。そして、支援する団体はたくさんあるけれど、みんな縦割りなので、同じ気持ちを持っていてもなかなかつながらないことに気づいたのです。

 そこで支援団体や、企業、省庁、政治家、家族、個人みんなに横串を刺すハブになる団体があればいいなと思いました。そして誰も排除しない「まぜこぜの社会」の居心地の良さをアピールしたいと考えたのです。私は芸能界にいるので、エンターテイメントでみんなが集う場をつくって、普段は自分とは関わらないひとたちの多様性を知ってもらえたら良いなと思ったのです。これがGet in touchの始まりです。

 最初は自閉症啓発から始めました。

 でも10年前はまだ、自閉症は正しく認識されていませんでした。そこで、国連が定めた「世界自閉症啓発デー」のシンボルカラーが青だったので「Warm Blue Day」とネーミングし活動をスタートさせました。

スミス まだ、障害者は触れてはいけないものだった頃なのでしょうね。

全国各地の患者会に話を聞く

東 私は芸能界のデビューが報道制作部の情報番組の司会だったんです。その時のディレクターが「報道と政治は困った人のためにある」と教えてくれたのがすごく残っていて、ずっと困っている人の困りごとを伝えたいと思っていました。まだGet in touchを立ち上げる20年前に、白血病の男の子と知り合う機会があって、骨髄バンクを知ってもらうための活動を始めました。

スミス その時もひとりで活動されていたのですか?

東 そうそう、ひとり(笑)。でも芸能人だから動いても不審がられないし、協力してくれる人もいました。だから「私を活用してください」って言ってね。それで全国各地の患者会と知り合い、話を聞く機会が増えて活動が広がっていきました。

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「自閉症は浸透していて良いなぁ」