授業風景はフランスの学校とぜんぜん違う。みな静かに先生の言うことを聞き、質問があったら手をあげて立って、椅子をテーブルに引いて、質問する。授業の始まりは日直の子どもがふたりで「これから1時間めの授業を始めます」と挨拶をする。先生はときどき誰かを指名し、「校長先生のところまでコレ持って行ってくれますか?」などとお使いを頼む。子どもに役割を与え、クラスの決まりごとも多い。覚えることが多くて大変だと思うけれど、全員がちゃんと務めている。先生が話していてもおかまいなしにぺちゃくちゃしゃべっているフランスとは正反対。
とはいえ、小学校の印象は、わたしが思っていたよりもずっと自由だ。もっと軍隊的な雰囲気をイメージしていたが、それはない。以前、日本の現代史についてフランス人向けの記事を書いたとき、あるニュース番組のアーカイブを見た。そこに出てきた日本の小学校は、規律が厳しく自由がなさそうな雰囲気だったのだ。実際に学校に行ってみたら、休憩時間の子どもたちは完全に自由だ。音楽を聴きたい子は聴き、外で遊びたい子は遊び、図書館に行きたい子は行って本を読んでいる。何もしたくない子はそのまま座っていてもいい。
先生がきっちり監視しているというふうでもない。しかも、子どもたちは自由でありながら、めちゃくちゃな感じにはならないのだ。フランス人には自由というとモノを壊すなど、時にめちゃくちゃな行動をとる子もいるのとは対照的だ。
あまり学校に行かないフランスの親
ところで入学説明会は、わたしの子どもの頃にはなかったと思う。念のためフランスに住む父に聞いたが「記憶にないね」と言われた。ただ、今フランスでは、入学説明会とは呼ばないけれど、日本でいう保護者会のようなものはあるとフランス在住のオレール先生が教えてくれた。オレール先生は若いけれど、小学校の教師になって13年。本の執筆のために、わたしは何度も彼女に取材をして貴重な情報を得た。保育園の卒園式はないけれど、一部の園では、卒園を証明する「何か」が子どもたちに配られているという。
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