つまり、フランスでは学校によって行事はかなり異なるということ。最近では、多くの地域で学校の先生と親のコミュニケーション強化を図っている。入学前の学校見学を実施する学校も増えてきたという。フランスの義務教育は、いろいろな問題を抱えていた。子育てに関心のない親、無責任な親もいると言わざるを得ない。あきらめて熱意を失っている先生もいる。ルールがより厳しい私立学校なら問題ないかといえば、そういうわけでもない。お金のある子どもが通う学校だとしても、必ずしもよい親ばかりではない。お金があることで、いっそう学校まかせにする親もいる。「問題が起きたら学校のせい」と言いきってしまうような。

 子どもと親と先生の出会いの機会を増やすのは必要なことだが、いくら学校側が努力しても協力しない親がいるのも事実だ。フランスでは、どの公立小学校に行くかは住んでいる住所で決められるから、私立に行くことを考えない場合はいくつかの学校を見比べても意味がない。「もし住所で決定された小学校と違う公立小学校に行きたいなら、ちゃんとした理由とその理由を証明するものを事前に提出しなければいけません。必ずしも承認されるわけではないですが」こうオレール先生は指摘する。ちなみに、小学生の85%は公立小学校に通っている。

 フランスの公立小学校では、説明会(のようなもの)はあっても、入学式はない。その習慣はこれまでもなく、将来的にもないだろうと思われる。ある意味で、親として気楽ではある。何かとプレッシャーの多い日本人の親たちには「ラクでいいな」とうらやましがられる。でもフランスはプレッシャーがなさすぎる気もする。フランスでも小学校がどんな意味をもつのか、ちゃんと子どもに説明する親もいるだろう。一方で、幼稚園から小学校へと通う場所が変わるだけ、という感覚の親もいるのだ。

日本の学校行事がうらやましい⁉

 わたし自身は学校公開や運動会など、親が学校に出向く機会が多いほどよいと考えている。学校は子どもが毎日過ごしている場所だ。その環境や友達との関係を見るためにも学校が開かれていることは重要だ。息子はどんな友達と話をしているのか、男の子だけでなく女の子とも話しているのか。そんなところを見るのも楽しい。また親が出向く出向かないにかかわらず、学校行事が多いことは、思い出が多いという意味でも評価している。日本人の夫と話していると、小中学校の話を詳細に覚えていることに気づく。昔のクラスメイトが誰だったか、どんな話をしたかまで。おそらく記憶の中にその時々の行事が区切りとしてマークされているのだろう。

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