■閉店後の掃除に3時間かかったことも 千葉県の「和風」ラーメンが愛されるまで
千葉県佐倉市の京成ユーカリが丘駅から徒歩7分。国道296号沿いにある人気店。魚介中心の和風出し汁で複雑なうまみのスープには、煮干しを中心に動物や貝、野菜、乾物など素材がいいバランスで合わさっている。ここにおぼろ昆布が溶け出しておいしい。分厚くてしっとりと柔らかいチャーシューも絶品で、全く飽きのこない、どんな人にもオススメできる一杯だ。
店主の大久保和仁さんは千葉・幕張で生まれ、中学から佐倉市に移り住む。昔からラーメンが好きでタウン情報誌『千葉WALKER』を片手にラーメンの食べ歩きをしていた。なかでも、横浜家系ラーメンが好きだったという。
専門学校を卒業後、就職をして、2社目で働いていた25歳の時、衝撃の出来事が起こった。ある日会社に行くと、突然会社の倒産を告げられたのである。会社員は安定した職業だと思っていた大久保さんはあっけにとられてしまう。
「会社員でも安定しないのであれば、まだ25歳だし好きなことをやろうと思い、ラーメン店で修行することにしました。家で本を見ながらラーメンを作るほど好きだったので、これを仕事にしたいなと思ったんです」(大久保さん)
こうして大久保さんは大好きだった千葉市の都賀にあるラーメン店「海空土」の門をたたく。「海空土」は柏の名店「大勝」出身の店主が紡ぐ、煮干しの利いた一杯を提供する老舗だ。
大久保さんはいつか店を開くときは、和風であっさりしたラーメンをイメージしていたという。流行に左右されず、一生やっていける味のラーメンを学びたかったのだ。いずれ独立したいことを告げての修業のスタートだった。
いざ修業を始めたものの、店主に怒鳴られる日々。料理経験もなく、覚えも悪かったという大久保さんはなかなか店の役に立てなかった。閉店後の掃除に3時間かかることもあった。