羽生結弦(写真映像部・松永卓也)
羽生結弦(写真映像部・松永卓也)

 3月30日から大阪公演で始まり、全国3カ所計10公演が行われたアイスショー「スターズ・オン・アイス」。羽生結弦さんは多彩なプログラムに全身全霊で挑み、国内外のスケーターたちもそれぞれの魅力を存分に発揮した。AERA 2023年4月24日号の記事を紹介する。

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 羽生結弦さん(28)の「プロ意識」の高さが示されたのは、スターズ・オン・アイスの初日を終えた翌日以降の公演だった。なんと2日目、3日目とそれぞれ違うプログラムを披露し、幅広い人間性を見せたのだ。

 2日目は、東京ドームで初披露した「阿修羅ちゃん」(Ado)。赤いサテンのシャツに青いネクタイというクールないでたちで、自ら振り付けたキレキレのダンスを披露するナンバーだ。初日の「過去との向き合い」とは趣を変え、ファンを盛り上げたいという気持ちがあふれていた。東京ドームでは4万人に向けて演じていたナンバーを、この日はリンクすれすれのアリーナ席の観客にアピールするなど、エンターテインメント性も抜群。演技後の公式コメントは、

「音が聞こえなくなるくらいに歓声がすごかったので、すごくうれしかったです」

■東北人の誇りを忘れず

 さらに3日目は、東京ドームで初披露した「千と千尋の神隠し」の「あの夏へ」。白装束風の衣装で、あでやかに舞った。

「違うプログラムも見たいという声があったので、三つのプログラムを披露しました」

 と羽生さん。毎日違うプログラムを完璧に演じる姿は、昨年からの公演で培った体力や精神力がいかに大きいかを感じさせた。

 続いて岩手県で行われた奥州公演でも3プログラムを披露。演技後にはこうコメントした。

「やっぱり僕は東北の地が好きなんだと、岩手に来て改めて感じました。東北のためにできることをして、東北人の誇りを忘れずにこれからも一生懸命スケートを滑っていきたいです」

 アイスショーを単なるエンターテインメントとはせずに、プログラム一つ一つに意義を求め、プロとしてできることを模索する。

 また一歩、前進していく羽生さんの姿があった。

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