大宮エリーさん(左)と出雲充さん(撮影/写真映像部・東川哲也)
大宮エリーさん(左)と出雲充さん(撮影/写真映像部・東川哲也)

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。ゲストは前回に引き続き出雲充さん。ミドリムシ研究のきっかけとなった旅の話を聞きました。

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大宮:ユーグレナ(ミドリムシ)を摂ると体にいいとわかりましたけど、出雲さん自身が病気だったから開発したわけじゃないんですよね。

出雲:はい。

大宮:何がきっかけだったんですか。

出雲:バングラデシュですね。生まれて初めて海外に出たのが、バングラデシュだったんです。

大宮:へえ。なんでそこを選んだんですか。

出雲:私の父親はシステムエンジニアの会社員で、母親は専業主婦。私は多摩ニュータウンで育ちました。

大宮:たまに歌う?

出雲:ああ、ごめんなさい。「多摩ニュータウン」です。

大宮:すみません(笑)。私、耳が遠くて、時々おかしな聞き間違いを。

出雲:いやもう、最高です(笑)。私は当時の日本でごく平凡な家庭で育ったんです。

大宮:そうなんですか。

出雲:それで、(駒場東邦)中高時代、友達から家族でハワイに行ったとか、ニューヨークで年越ししたとか話を聞いて、ああ、私も海外行きたいなと思ったんです。でも、うちは親がパスポートをそもそも持ってなくて。

大宮:ほー。

出雲:それで、大学に入ったら1年生の夏休みに、生まれて初めて海外に行こうと思ったんです。でも、いまさらみんなと同じところへ行くのは嫌で、ちょっとエキセントリックなところに行ってみたいなと。それで、バングラデシュを選んだんです。

大宮:どんな旅になったんですか。

出雲:当時のバングラデシュは、人口が1億2千万人のうち6千万人弱が農家さんなんですけど、1日のお給料の平均が100円なんです。年収が4万円に届かない農家さんがたくさん暮らしている国なんですよ。

大宮:なるほど。

出雲:世界最貧国とも言われていましたし、私はみんな食べるものがなくて困っているだろうなと思って、自分のスーツケースに山ほど栄養食品を入れて行ったんですよ。で、1カ月いたんですけど、全部持って帰ることになりました。

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