AERA 2023年3月13日号より
AERA 2023年3月13日号より

 更年期症状の影響は経済的損失にもつながる。「更年期離職」による損失は、男女合わせて6300億円に上るという。更年期症状が、仕事にマイナスの影響を与えている実態が見えてきた。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。

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 経営者や管理職など、責任あるポジションで働く世代の人たちが更年期を迎え、不調を抱えながらの働き方に悩んでいる。

 都内に住む臨床心理士の女性(48)もその一人。3年ほど前から、眠気や頭痛などに襲われる「月経前症候群(PMS)」の症状が強まり、さらに残尿感や睡眠障害、節々の痛み、気持ちの落ち込み、生理不順……と次々に症状が重なって、仕事にも支障をきたすようになった。

「特に、ケアレスミスの頻度が高くなって、職場に迷惑をかけているのでは、と不安感が強くなりました。記憶力には自信があったのに、頭がボーッとすることが増えてしまって。ミスする自分に落ち込み、仕事を全部辞めちゃおうかなと思うようにもなっていた。パフォーマンスが落ちるから、さらに残業が増える。悪循環に陥りました」

 昨夏、病院の婦人科を受診し、「昔から、生理周りの症状は、ずっと我慢しながら働いてきた」と伝えると、婦人科医からは、

「生活の質を下げるほどつらい症状は、我慢するものじゃなく、治療の対象。だから、受診してつらさを取っていけばいい」

 と伝えられた。医師から「我慢しなくていい」と声をかけられ、対処法があるとわかり、安心感を覚えた。今は婦人科で処方された漢方薬を服用している。

 NHKと「女性の健康とメノポーズ協会」などが共同で行った「更年期と仕事に関する調査2021」から、働く人にとり更年期症状が、仕事にマイナスの影響を与えている実態が見えてきた。離職をはじめ、雇用や収入に影響があった人が、女性で15.3%、男性で20.5%に上った。「更年期離職」による損失が、男女合わせて6300億円に上るという試算もある。

 女性の健康とメノポーズ協会の三羽良枝理事長は、こう語る。

「自分ひとりで症状を我慢して抱え、症状がよくならず離職に至る。これは、明らかな経済的損失です」

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