※写真はイメージです(GettyImages)
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 女性と結びつき、勢力を拡大してきた面がある新興宗教。その根本には、ジェンダー不平等の社会構造があるという。AERA 2023年1月16日号から。

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 新興宗教(新宗教)と女性──。

 旧統一教会をはじめ一部のいわゆる新興宗教は、女性と強く結びつきながら勢力を拡大してきた面があると識者から指摘されている。

 安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者の母親も、旧統一教会の信者だ。81年、母親は自身にとって精神的な支えだった実母を失い、84年に夫が自殺。長男も大病を患った。思い悩み、救いを求めたのが旧統一教会だった。入信したのは91年。活動にのめり込み、総額1億円を超える献金をした。

■苦しむ女性の「受け皿」

 新興宗教に引き込まれた女性の背景に、何があるのか。

 30年以上にわたり新興宗教を取材し、『新宗教の現在地』の著書があるフリーライター・いのうえせつこさんは、「新興宗教は女性をターゲットにしてきた」と語る。

「背景には今も昔も変わらない、女性が置かれた立場があります。特に主婦の場合、夫は外で働きお金を稼ぎ、妻は家庭で子育てをする『性別役割分業』の社会通念がある。その中で、『子どもがしっかり育たないのはお前のせいだ』などと言われる。苦しみ追い詰められた女性にとって、新興宗教が受け皿になっていくのです」

 勧誘の手段として、旧統一教会は「先祖の祟(たた)り」を持ち出すのが特徴だという。例えば、「あなたが悪いわけではない。4代前の先祖が成仏してないから」などと持ちかける。「因縁トーク」と呼ばれるもので、不幸の原因が家系にあるなどと脅し、不安をあおる。

 4代前の先祖が成仏していないという論拠は、理性で考えればおかしいと思えるはずだ。だが、狭い空間で一つのことを言われ続けると、マインドコントロールされて思考停止に陥り、信じるようになってしまうという。

「さらに、教会に行けば、同じ悩みを抱えた仲間がたくさんいます。そして、献金を続ける限りは守ってくれます。そうした居心地のよさも、逃げ場をなくした主婦たちの受け皿になっていると思います」(いのうえさん)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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