発表している子どもが見つけたのは薬の袋の表示。ほかにも「シャープペンシルの太さ」「車のナビ! うちまで7.9キロ」など小数を発見した
発表している子どもが見つけたのは薬の袋の表示。ほかにも「シャープペンシルの太さ」「車のナビ! うちまで7.9キロ」など小数を発見した

「情報教育を担当している職員の仕事が増えた。IDやパスワードの管理、新学期にパソコンを使用するまでの手続きなどで、時間外労働が増加した」

 別の教員も「端末は1年使うとけっこうボロボロ。保護者からクレームがくることもある」と明かす。

「1人1台タブレット」のシンプルかつ根本的な問題も浮き彫りになってきている。政令指定都市の公立中学校校長が言う。

「1人1台端末を使う授業では、基本的に生徒の画面を、教師がすべて把握はできない。悪く言うと、授業中ゲームをしても、子ども同士でチャットをしていてもわかりません。見回ってもスワイプで隠すのは簡単です」

 また、子どもたちへの影響を指摘する意見も多く聞かれた。まず、子どものコミュニケーション能力の低下。前出の菊池さんはタブレット導入後の学習内容の変化を懸念する。

「本や辞書で調べる学習や、人に会って情報を収集する機会が減ることが危惧されます。そこで、教育委員会の指導を受けながら、同僚教員とも教材研究して、実際に人に話を聞いたり、本や辞書で調べたりする活動も積極的に行っています」

■読み書きがおろそかに

 調べたいことを、詳しい人に聞く。そうした一次情報を元に物事を考えるのは、社会で必須のスキルだ。ネットの情報には、嘘や誇張もたくさんある。情報の取捨選択の方法を小中学生に教えなければならない。

 さらに、ICTの導入で従来の学習の比重が軽くなったという指摘もある。再任用教員として公立小学校に勤務する60代の女性教員はこう訴える。

「子どもや保護者に、ICTを使えば何でもできるように錯覚させ、PC操作ができないと、我が子が取り残されるような不安を与えている。従来の教育で大切にされてきた『読み、書き、計算』がおろそかにされている」

 都内の公立小の50代教員は、

「ICT教育がいい悪いというより、突然スタートされ、学校現場に丸投げで戸惑うばかり。推進されても弊害が多い。書けない、読めない子が自動変換だけ覚えてしまう」

 と、タブレット端末の導入で楽な方に流れる子どもたちを、心配する。

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