みなみ・かほ/1964年生まれ。俳優として多方面で活躍。2022年12月、自作の詩を元にした絵本『一生ぶんのだっこ』(講談社)刊行予定(photo 本人提供)
みなみ・かほ/1964年生まれ。俳優として多方面で活躍。2022年12月、自作の詩を元にした絵本『一生ぶんのだっこ』(講談社)刊行予定(photo 本人提供)

 秋の深まりとともに、夜が長くなるこの時期。現実から離れて本の世界に入り込んでみませんか。読む本に迷ったら、読書を愛する人が選んだ「没入できる本」を参考にするのも一つの手。俳優・南果歩さんに聞きました。2022年11月14日号の記事から紹介。

【写真】南果歩さんが選んだ「没入できる本」はこちら

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 忙しい日々を送っていると、読書の時間が十分に取れないことがよくあります。でも、自分の中に新しい何かを入れたい。そんな時は、岡本太郎さんのエッセイを開きます。気に入っているのは『自分の中に毒を持て』『自分の中に孤独を抱け』『自分の運命に楯を突け』。最初から読まなくてもいいんです。ぱっと開いたところから、その時の自分にリンクする言葉を選び取るようにしています。

『自分の中に毒を持て』
岡本太郎/青春文庫
『自分の中に毒を持て』 岡本太郎/青春文庫

 太郎さんのエッセイは、いつも情熱的で前向きで、疲れた時には特によく効くお薬のようなもの。エネルギーが注入されていくような感覚になります。

 詩人の最果タヒさんとアーティストの清川あさみさんの共著『千年後の百人一首』は、自分では整理がつかないつらい気持ちや人には見せない心の裏側を解説してくれる一冊です。

 百人一首の歌の原文があり、その横にタヒさんの現代語訳が並んでいるのですが、紡がれている言葉にとても惹かれます。煮詰まっている時の心に沁みてきます。うまくいかない人生を嘆いたり、恋に破れたりする歌が多くありますが、タヒさんの解釈によって「この心情や場面はこう表現すればいいのか」という発見があります。

■涙を流すのは大人たち

 読書の醍醐味は、自分以外の人生を体感できることだと思います。私はずっと私を生きてきましたが、物語の世界に身を置くと、もうひとりの自分が動き出し、日常ではない感情や学びを得ることができます。

 唯川恵さんの小説『100万回の言い訳』は、まさにそんな一冊です。テーマは「結婚を続けること」。章ごとに主役が入れ替わり、男女4人のそれぞれの主観から見た日々が描かれているのですが、4人の人生に共通するのは「人間は都合の悪いことを他者には言わない」ということ。それは、自分の人生をうまく進めていくために誰もがやっていることなんですよね。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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