──自分も年を重ねながら、同じ役を演じ続ける。それは、限られた俳優にしか経験できないことだ。マリコを演じることは沢口にどんな喜びを与え、一方で難しさを感じさせているのか。

沢口:役と共に年齢を重ねて成長していける喜びはあります。「以前ならこういうことは言わなかった」というセリフを発見した時に特に感じます。

 難しさを言いますと、やはりシリーズを重ねるごとに科学も進歩していて、この「科捜研の女」というドラマも毎年進化を続けていて、両方のハードルが高くなっている。そこですね。

 毎年、台本をいただくと新しい課題を与えられている感じがします。セリフに専門用語が多いのですが、それをなるべく自分のものにして滑らかに言えるよう、反復して体に馴染(なじ)ませてから現場に臨みたい。私の課題への取り組み方はそれです。なので、撮影が始まったらもうお休みはない感じ(笑)。その中でもなるべく体を動かして、睡眠時間も確保しながら、シーズンをなんとか乗り切ってきました。

──「忘れられない回はありますか?」と尋ねると、2013年の年末に放送された「科捜研の女スペシャル」のあるシーンを挙げた。それは、沢口の中のマリコが大きく爆発した瞬間でもあった。

■土門は頼もしい相棒

沢口:マリコが辞表を提出することになった回ですね。父親であり監察官でもある小野武彦さんに辞表を渡す場面。本番前のテストの時に感極まって声を上げて泣いたら、武彦さんも泣いてしまわれて。微妙に親子っぽい会話もそこにあり、心が震えてしまいました。マリコにとって辞表を提出する、科学と縁を切るっていうのはすごく大きいことですし、お父さんもそれは分かっていて……。親子の葛藤がありました。

──内藤剛志が演じる土門薫刑事とマリコとの信頼関係も、このドラマには欠かせない要素だ。ファンからは“どもマリ”と呼ばれ愛されてきた。

沢口:土門さんは何度も危機的な状況に遭っている方(笑)。忘れられないのは、土門さんと一緒に犯人がいるであろう小屋に駆けつけたら、小屋がバーンと爆発して、その飛び散る破片を土門さんが体で受け止めてマリコを庇(かば)ったシーン。土門さんは、言葉遣いは乱暴で粗野ですが、そういった男気のある方です。頼もしい、マリコにとっての相棒なんです。

次のページ