多くの人が行き交う渋谷のスクランブル交差点。「安倍氏国葬、執り行われる」のニュースを流す電光掲示板(奥)=9月27日、東京都渋谷区
多くの人が行き交う渋谷のスクランブル交差点。「安倍氏国葬、執り行われる」のニュースを流す電光掲示板(奥)=9月27日、東京都渋谷区

 賛否の声が渦巻く中、安倍晋三元首相の国葬が終わった。参列者は4千人超だったが、反対の訴えは各地で続いた。当日の「分断の現場」を取材した。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。

【写真】日本武道館で行われた安倍晋三元首相の国葬の様子

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 国会正門前には、数千人規模の人が集まり、最後まで反対の声をあげた。

「国葬反対」のプラカードを持っていた山本清子(きよこ)さんは、長野県松本市から20人近い仲間と一緒にバスで3時間以上かけて駆けつけた。どうしても、自分の目で見たかったのだという。

「大事な税金を勝手に使って、許せないです。お金は生活に困っている人たちに使ってほしい」

 都内で幼児教育に携わっている郡司真子(まさこ)さん(54)は、国葬反対のデモにはじめて参加したという。

「国葬を閣議決定だけで押し切って決めましたが、民主主義がなくなってしまう恐ろしさがあります」

 国葬の中止や反対を訴えるデモは全国の各所で行われた。国葬会場に近い九段下交差点では、国葬反対を訴えるグループと日の丸を掲げた賛成派が鉢合わせ、怒号が飛び交い、一帯は一時騒然とした。

 賛成と反対──。互いの意見がぶつかっている時、国葬やデモの現場を離れるといつもと変わらない日常があった。

 国葬開催の午後2時。東京・渋谷のスクランブル交差点では、黙祷も行われず抗議の声もあがらず、大勢の若者が行き交っていた。

 ロリータファッションに身を包んだ女子大学生(20)は、国葬が行われていることは知っているという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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