入試にも影響する内申書は「態度」までも点数化されるが、専門家は意欲的に学ぶかどうかは「少なくとも半分は教育者の問題」と指摘する(撮影/写真映像部・東川哲也)
入試にも影響する内申書は「態度」までも点数化されるが、専門家は意欲的に学ぶかどうかは「少なくとも半分は教育者の問題」と指摘する(撮影/写真映像部・東川哲也)

 夏休みも終わり、2学期が始まった。志望校選びが本格化する時期だ。高校入試を控える中学生の中には熾烈な内申点争いに巻き込まれるケースもある。AERA 2022年9月19日号の記事を紹介する。

【こんなにも違う!公立校入試の内申書の比率はこちら】

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「内申がこれでは、都立進学校は難しい」

 都内の私立高校に今春入学した男子生徒は、中学3年のとき、三者面談での担任の言葉で志望校への出願をあきらめた。テストの成績はまずまずだが、内申点では3が目立つ状況だった。

「中3から内申を上げるのはムリとも言われました」

 男子生徒の母親はこう振り返る。都立入試で内申点が必要なことは入学当初から分かっていた。だが、何をどうしたら上がるのか。内申点の付け方に疑問を抱く。

 内申点とは、各教科の学びをどの程度達成できたかを示すもので、教員が作成する。多くの公立高校の受験で、出欠の記録や課外活動の報告を含めた「内申書」が中学から高校へと提出され、合否判定にも使われる。

 中学校では昨年度から新しい学習指導要領が実施され、従来の評価に加えて、各教科の「観点別評価」も内申点に加味される。観点別評価とは「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つ。「態度」までも数値で評価されることになり、内申点を意識して常に気を張り詰めて学校生活を送る子どもも少なくない。

AERA 2022年9月19日号より
AERA 2022年9月19日号より

 都内在住の女性(44)の中3と、中1の子どもたちは内申点を意識し、授業中の挙手はもちろん、提出物は期限よりも早く提出、生徒会にも立候補する。上の子は定期テストの成績も良く、主要教科の評定はオール5。だが実技教科は全て4に留まる。

「勉強はよくできるほうなのですが、“いい子ぶっている”と気に入らない先生もいるようで、内申点をキープしたり、アップさせるのは大変です」(女性)

 ある塾で配布された資料には内申点を上げる方法として「積極的に手を挙げる」ことや、「提出物の期限を守る」などと書かれていた。こうした指導が地域にも浸透したためか、冒頭の男子生徒の通う学校では、委員会活動の委員長や部活の部長は争うように挙手がなされ、学内で開かれる音楽会の指揮者でさえも争奪戦になっているという。

 兵庫県在住で現在高校生の娘を持つ女性は、娘の中学時代に定期テスト対策としてママ友たちと協力し「情報収集していた」という。各教科の定期テストは学年の教科担任が作るため、過去にその教員が作った問題を先輩保護者から入手、仲間の家族同士でシェアしていたという。

「先生によって出題ポイントの傾向がありますから、かなり有効に使えました」

(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2022年9月19日号より抜粋