(illustration 土井ラブ平)
(illustration 土井ラブ平)

「まずは夫婦でやってみる。もちろん、親だけですべてをこなすのは難しいので、保育園などの子育て施設や地域の支援策を利用します。ママ友やパパ友のネットワークで対応できることもあるでしょう。祖父母に頼るのは、それでもダメなとき。頼み方も大切で、いきなり『今日よろしく』はNG。事前にスケジュールを立てて丁寧にお願いし、感謝の気持ちも言葉に出して伝えることが大切だと思います」

 それでも、すれ違いが起こることもある。円満に協力関係を築くにはどうすればいいのか。祖父母世代向けの「孫育て講座」や、両親世代向けの「じぃじ・ばぁばとの付き合い方講座」などを実施しているNPO法人「孫育て・ニッポン」の棒田明子理事長はこうアドバイスする。

「大前提として、子育ての主役はパパ・ママです。育児の方針やしてほしくないことは事前に伝えましょう。祖父母はサポート役に徹してください。手・口・お金は出し過ぎず、気持ちにも体力にも余裕を持って。断る勇気も大切です」

■今と昔の「常識」

 両親・祖父母ともに今と昔の子育ての違いを知ることも重要だ。今の常識は、祖父母世代が子育てをしていたころとは大きく異なる。以前言われていた「抱き癖」は否定され、最近では愛着形成のためにもできる限り抱っこすべきだとされる。乳児の入浴後、かつては白湯を与えていたが今は母乳やミルクが推奨される。こうした例は数多くある。

「祖父母は自分たちのころとは違うんだと理解して、できる限り受け入れましょう。両親も、祖父母は子どものために最善と思うことをやっていることを忘れないで。はちみつや食物アレルギーなど命にかかわることを除けば、『常識の違い』は気にしすぎなくていい。預けるときは諦めも必要です」

 子どもにとって、祖父母と日常的に接するのは大きなメリットがある。棒田さんは続ける。

「祖父母は子どもを無条件で応援してくれる最強の応援団になってくれます。両親よりも上の世代と日常的にかかわるのは、大人になって社会参加するときにも役立ちます。多少の違いは乗り越えて、子どものために協力体制を築けるといいですね」

(編集部・川口穣)

AERA 2022年8月29日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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