(illustration 土井ラブ平)
(illustration 土井ラブ平)

 子育て・孫育てを巡り、両親と祖父母の間で意見の相違や衝突が起こりがちだ。どうすればいいのか。専門家に聞いた。AERA2022年8月29日号の記事を紹介する。

【図版】「祖父母とのお付き合いのポイント」と「孫育てのポイント」はこちら

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 埼玉県に住む20代の女性は去年12月、第2子の妊娠を機に隣県から実家の近くへ引っ越した。2歳の長男は少しずつできることが増え、目が離せない。夫も子育てには積極的だが、共働きで2人目が生まれると手が足りなくなるかもしれない。

「以前は実家まで片道2時間くらいかかるところに住んでいて、両親ももっと孫に会いたいと言っていました。近くに住めば頻繁に会わせられるし、困ったときは育児も手伝ってもらえて『一石二鳥』だと思ったのですが……」

 両親はともに60代で仕事を引退したばかり。時間、体力とも余裕があり、育児参加に積極的だったという。だが、近居をはじめてすぐに問題が続発した。

 子育ての方針に口を出してくる。預けるたびに家ではあまり与えていないお菓子やジュースを与える。近所の子の名前を出して、「あの子はこうなのに」と比べられる……。

■「よかれ」と思っても

 口出しは「よかれ」と思ってのアドバイスだし、甘いものを与えるのも少しでも子どもが寂しい思いをしないようにしているのだろう。近所の子と比べられるのも心配だから。女性は頭ではわかっていても、顔を合わせるたびにイライラが募った。

 決定的だったのが、長男の「赤ちゃん返り」への対応だった。赤ちゃん返りとは、下の子の妊娠や出産を機に、上の子がそれまでできたことをやらなくなったり、頻繁に抱っこを求めたりするようになること。近年は、ほとんどの育児書などで「できる限り甘えたい気持ちを受け止めるべき」だとされている。

「両親は、『だっこして』『くつしたはかせて』と甘える長男に対して、『お兄ちゃんになるんだから』と突き放す。私に『甘やかしすぎでは?』とも言ってきました。『気持ちを受け止めて』とお願いしても、妹がいた私を引き合いに『あなたもそうやって育ったんだから』と取り合ってもらえませんでした」

 保健師にもらったハンドブックを実家のテーブルに置いてみたり、育児書を送ったりしたが、逆効果だったという。

「参考までに、と本を送ったつもりが、両親には私が『勉強しろ!』と言っているように映ったようです。お互いストレスがたまるだけだから、両親に手助けしてもらうのは諦めて、しばらく実家には寄り付かないようにしようと思っています」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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