「インドを知ることは日本文化の源流だけではなく、世界の文化史を理解する鍵でもあります」

 ここで「インド沼」を語るうえで、興味深いデータを紹介しておこう。

 今年1月、外務省がインドで「インドにおける対日世論調査」を実施したところ、今の日本を「とても信頼できる・どちらかというと信頼できる」と回答した人が計90%に上ったのだ。この傾向は数十年、変わっていない。ユーチューバーのMayoさんは、

「インド人は、日本人のことが大好きでリスペクトしてくれている。常にインドからの愛を感じている」

 と話す。それは間違いなく沼の心地よさを高めている要素だろう。だからこそ、とMayoさんは言う。

「日本には、インドを見下す雰囲気があって、悔しい。イメージを塗り替えなきゃいけない」

世界遺産のタージマハル。周囲をヒンドゥー教が神聖視する牛が悠然と歩く。経済発展の一方で、混沌とした雰囲気は相変わらずだ
世界遺産のタージマハル。周囲をヒンドゥー教が神聖視する牛が悠然と歩く。経済発展の一方で、混沌とした雰囲気は相変わらずだ

■深い愛を育てるとき

『新インド入門』の著者・田中さんも言う。

「歴史、宗教、国土。すべてにおいて日印の間には問題がないからうまくいっている。より血肉の通った関係にしていくために、インドを見下すことなく、両思いとして深い愛を育てるときに来ていると思います」

 大国インド。沼にはまって、体感する価値は十二分にある。(編集部・古田真梨子)

AERA 2022年8月29日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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