アジア系女性の頭などを125回以上殴る加害者の防犯カメラの映像/YouTubeから
アジア系女性の頭などを125回以上殴る加害者の防犯カメラの映像/YouTubeから

 インスタグラムのアジア系ヘイトに反対するアカウントには、悲惨な映像が毎週のようにアップされる。暴行を受けて顔があざだらけになったり、顔の一部が変形したり、あるいは病室で人工呼吸器につながれているアジア系女性の写真が続く。

 ヘイト犯罪による後遺症は、身体的な傷だけではない。冒頭の集会でスピーチしたエスター・リーさん(45)は、ニューヨーク在住18年で、ブラジル生まれの韓国系米国人。昨年10月、地下鉄車両内で黒人男性に絡まれ、無視すると「誰がお前なんかにいたずらするか。不愉快な(ウイルス)保菌者め」と言われて唾(つば)を2回かけられた。

 彼女はビデオを撮り、警察に届けたが、捜査の結果は「迷惑行為」。「保菌者」という言葉は、特定の国などを指すアジア系に対する人種差別とみなされず、「ヘイト犯罪」として認められなかった。

 リーさんはトラウマで、パニック障害や視野狭窄(きょうさく)のほか、出勤に同行者が必要になった。この体験から「アジア系へのヘイト犯罪件数は、実際はもっと多い。だから私はもう沈黙しない」と涙ながらに強調した。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2022年5月16日号より抜粋