国際社会から非難を浴びながら、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領。民間人への攻撃さえいとわない暴挙の背景には何があるのか。AERA 2022年4月25日号は、三浦清美・早稲田大学文学学術院文学部教授に聞いた。
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今回の戦争は、「宗教戦争」であると思っています。西欧のキリスト教とロシア正教との戦争です。
NATO(北大西洋条約機構)を構成する大多数の西欧諸国は、かつてのローマからカトリックを受け入れた国々を母体としています。
一方、ロシアとウクライナの前身である「キエフ・ルーシ(公国)」は988年にコンスタンティノープル(現イスタンブール)からギリシャ正教を受容します。これが、今のロシア正教の原点となりました。
カトリックとロシア正教は同じキリスト教ですが、似て非なるもの。その違いは、イエス・キリストをいかに考えるかの違いです。カトリックではキリストは神であると同時に人間であるのに対し、ロシア正教は思考の上では同じように理解しながら、感性の上ではキリストが人間であることが迫ってきます。つまり、ロシア正教は神と化した人間を求めるのです。
この違いが1千年にわたる宗教対立となり、ロシア人特有の宗教感覚は国の頂点に立つ者を「神の代理人」とする統治者観を生むことになりました。
神の代理人は、帝政ロシアではツァーリ(皇帝)で、今はプーチン氏です。プーチン氏の権力の強大さは、この統治者観の上に成立しています。
ですから神の代理人であるプーチン氏がウクライナに侵攻すると言えば、ほとんどのロシア人は神に命令されるのと同じ感覚で最終的には受け入れているのだと思います。
総主教は侵攻を支持
またロシア人には、西欧に対する長年の反発もあります。邪悪な西欧が善良なロシア人をいじめている。ロシア人はそういう気持ちを常に抱いています。
プーチン氏がウクライナの侵攻を決めたのは、ウクライナを民主主義でたぶらかそうとする西欧に対する怒りがあります。また、ウクライナが西側に近寄ることでNATOのミサイルがウクライナに配備されれば、ロシアが脅威にさらされるという強烈な危惧があります。