illustration 小迎裕美子
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■在宅時間増で能力発揮

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に在宅勤務が定着し、自宅で過ごす時間が増えたという人も多いだろう。コロナ禍は不公平な夫婦間の家事・育児の分担割合を見直す機会でもある。

「今の家事分担が最適解」と話すのは、東京都新宿区在住の女性(36)。19年に結婚したが、商社勤務の夫(35)は当時インドネシアに駐在し、生活は別々だった。20年4月に夫が帰国し同居生活がスタート。21年2月には第1子が誕生し、子育てに追われる日々だ。

 二人は「家事は、やれる人がやる」スタイル。女性はリサーチ会社に勤めており、育休中の現在は、平日の家事分担割合は女性8、夫2。とはいえ、夫は週3日在宅勤務なので、女性が買い物に出かけるときは夫が子どもの面倒を見るし、掃除や洗濯、昼食作りも手が空いている方が適宜やる。週末は、女性が習い事やスポーツジムに行っている間、夫が家事、育児を担い、分担の割合はほぼ対等になる。

「私はもともと整理整頓が苦手。夫は家にいる時間が増えたことで、家事能力をより発揮できるようになったんじゃないかな」

 その言葉をすんなり納得できたのは、記者が友人と共に彼らの自宅に招いてもらった時。女3人がお酒を飲みながら大爆笑している傍らで、女性の夫は玄人(くろうと)はだしの絶品スパイス料理を次々に出し、お酒を注ぎ、口直しのトマトを切り、子どもの面倒を見るという、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍ぶり。普段の家事分担の様子が、伝わってきた。

illustration 小迎裕美子
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 コロナ禍での共働き世帯の家事・育児の分担の変化について、ニッセイ基礎研究所保険研究部准主任研究員の村松容子さんはこう指摘する。

「共働き世帯が増えたとはいえ、主な収入が夫によるものである世帯は多い。これまで男性は家にいる時間が短かったゆえに家事に思考が向いていない面があった。しかしコロナで在宅勤務が増えたり接待や出張が減ったりして家にいる時間が長くなり、家事を見直す機会ができた」

>>【後編】「コロナで育児時間減の女性が11% 夫婦の家事バランス、移住し5対5になった家庭も」へ続く

(ライター・羽根田真智)

AERA 2022年4月18日号より抜粋