玉木氏は、小池氏が17年10月の衆院選前に「希望の党」を立ち上げた際、民進党から合流した中心人物の一人だ。同年11月に出版された上杉隆氏らの著書『オプエド 真実を知るための異論・反論・逆説』(KADOKAWA)に寄せたコラムでは次のようにつづっていた。

立憲民主党の泉健太氏は昨年11月、枝野幸男氏から代表を引き継いだ
立憲民主党の泉健太氏は昨年11月、枝野幸男氏から代表を引き継いだ

「この本が書店に並ぶ頃にはもう結果が出ていますが、予言します。政権交代をしているか、少なくとも自民党が過半数割れして安倍晋三首相が退陣しているはず。(中略)今回の選挙は、民進党が解党して小池百合子さんの希望の党と合流したことで大きく流れが変わったことは、みなさん認めていただけると思います」

 17年衆院選では、小池氏による「リベラル派排除」に対抗して枝野幸男氏が立憲を立ち上げ、民進が分裂。自民が大勝した。希望は立憲に競り負け、野党第1党にもなれなかった。「希望の党」再来となる今回の動きは、20年の立憲合流にも応じなかった玉木氏にとってリベンジとなるものだ。立憲の切り崩しも視野に入れている。

 立憲は「立憲と参院選の協力をやらないという証拠」(幹部)と受け止めたが、この国民民主の動きに最も強い不快感を示したのは、衆院選後に国会内での連携を深めてきた日本維新の会だった。

■「希望の党と何が違う」維新の松井代表が批判

 維新には、都議時代に小池氏らによる党運営の手法に反発し、希望の党設立にも疑問を呈して都民ファを離党した音喜多駿政調会長らが所属する。20年の都知事選でも小池氏に対抗馬を擁立した。松井一郎代表(大阪市長)は記者団の取材に「希望の党の復活やろ。何が一致して一緒になるのか。ひっついたり離れたり、選挙のたびに目の前の足し算ばかり。有権者からおかしいと思われるんじゃないの」と批判。「希望の党と何が違うのか、説明する必要がある」と迫った。

 通常国会が召集された17日、維新、国民民主の幹事長・国会対策委員長は国会内で会談し、改めて両党の連携を進めることを確認した。ただ、維新の藤田文武幹事長は「選挙を一緒にやるために、というわけでは私たちの関係は現時点ではない」と留保をつけた。

 参院選で与野党の勝敗を大きく左右するのは32ある1人区だ。そこで共産党も入れた候補者調整をめざす立憲と、独自路線を歩む維新、都民ファとの合流をめざす国民民主の3者の主導権争いが続く。野党候補を一本化して与党と対抗する「野党共闘」は遠のいている。(朝日新聞政治部・南彰)

AERA 2022年1月31日号より抜粋