新型コロナウイルスのオミクロン株の流行が収まらない。そのなかで、「ブレインフォグ」という見逃せない症状が広がっているという。AERA 2022年1月31日号の記事を紹介。
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新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染者の症状に、従来株とは異なる「ある特徴」が報告されている。
英国の感染状況を分析している「ゾエCOVIDシンプトム・スタディー」が1月6日に公表したデータによると、オミクロン株の主な症状は(1)鼻水(73%)、(2)頭痛(68%)、(3)倦怠感(けんたいかん、64%)、(4)くしゃみ(60%)、(5)のどの痛み(60%)となっている。上位五つの症状よりも低いものの、見逃せないのが、24%の人が訴えている「ブレインフォグ」(脳の霧)だ。
ブレインフォグは文字通り、頭にモヤがかかったような状態に陥り、思考力や集中力が低下する症状だ。従来、新型コロナの後遺症として注目されてきたが、オミクロンの場合、感染初期から「一般的な症状」として表れるという。この報告に衝撃を受けた一人が、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の山村隆・特任研究部長だ。
「オミクロン患者の4分の1にブレインフォグの症状が出るというのは、想像するだけでも恐ろしいことです。初期対応を誤れば一定の人が慢性化し、働き盛りの人たちの人生を奪うことになりかねません」
■家族にも理解されない
ブレインフォグは診断がなかなかつかないのが実情だ。患者は医師や職場、家族にすら症状を理解されず、精神的に追い詰められるケースもある。医療関係者が運動を勧めたり、「怠けずに仕事に行きなさい」といった指導をしたりすれば、症状が一気に悪化して慢性化するリスクもあるという。山村さんは「発症メカニズムをしっかり理解した上で、早期に医療関係者向けの治療ガイドラインなどを策定する必要があります」と訴える。
全身の極度の疲労やブレインフォグは「筋痛性脳脊髄(せきずい)炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」という免疫疾患でよくみられる症状だ。発熱やのどの痛みといった風邪の症状の後に発症することが多いため、主に呼吸器に感染するウイルスが引き金となって起きると考えられている。