■重要なのはメリハリ

 世界は感染症のパンデミックに限らず、大規模災害のリスクなど混沌(こんとん)の渦中にある。変化が激しい時代を生き抜くには、企業が目指す方向性や個別の会議の目的、個人のニーズに合わせた働き方などをトータルで検証し、大胆にリセットしていく柔軟さが企業に求められている。

「出社」の意味はこれからどう変化していくのか。

 昨春以降、国内の主要14企業のヒアリングを実施した労働政策研究・研修機構の荻野登リサーチフェローは「重要なのは出社とリモートワークのメリハリ」だと話す。

 これからは漫然と出社するのではなく、目的が明確化されていくという。

 例えば、単に「会議があるから」ではなく、誰とどういう議論をして今後の企画にどう役立てるのかも、あらかじめ念頭において出勤に臨む。雑談が目的でもいい。コミュニケーション不足を補うため雑談だけして帰るのも、「業務」と捉える人事担当者は増えている。

 荻野さんはリモートと出社を組み合わせた「ハイブリッド型」の働き方が主流になれば、自律的な働き方がより重視されると見込む。

「管理職が目を光らせて監視しなくても、成果さえしっかり出してくれればいい、と割り切る企業が増えています」

 普段から「キャリアの棚卸し」を心がけ、専門性を意識した働き方がますます求められる、ということだ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2021年12月20日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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