レイクサイドの子供たちは初めてのコンピューターに夢中になった。その中で飛び抜けたプログラミングの才能を見せたのが中学生のゲイツと、マイクロソフトの共同創業者になる高校生のポール・アレンだった。

「時間貸し」のサービスをした地元のベンチャー企業は、子供たちに「コンピューターのプログラムを壊してみろ」とけしかけた。条件は一つ。壊れた時は、どういう操作をして壊したか記録して会社に提出すること。要するにこの会社は、出荷前のプログラムのデバッグ(事前に不具合を取り除く作業)をオタクの子供たちにやらせたのだ。プログラマーが絶対的に不足していたこの時代。ゲイツやアレンのような天才的なオタク少年は、そんじょそこらの大人よりはるかに戦力になった。

 米国では半世紀以上も前から「オタク ヒーロー化計画」が進み、それが世界のネット産業を牽引(けんいん)する「GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)」を生んだ。

「日本の教育を変える!」と船出した3人の海賊は、子供や大人たちにプログラミングという翼を授けている。米国から半世紀遅れかもしれないが、彼らが日本の教育に与えるインパクトは決して小さくない。(敬称略)(ジャーナリスト・大西康之)

AERA 2021年12月13日号より抜粋