AERA 2021年12月13日号より
AERA 2021年12月13日号より

 さらに、政経の定員は450人から300人に減った。より狭き門となったことも合格水準の維持につながったのだろう。

 ただ、学部を問わず受験生全体で見ると、早慶をダブル合格した場合の進学先は慶應64.9%、早稲田35.1%と、依然として慶應が優位に立つ。市村さんはこう説明する。

「早稲田は学部間のレベルの幅が広いため、慶應を本命として、早稲田の合格しやすい別系統の学部を併願する人も多い。結果的に大学全体で見ると、慶應を選ぶ人が多いのでは」

 とはいえ、近年の早稲田の改革が注目されているのは間違いない。14年、政経の学生が使う新校舎が完成した。吹き抜けを突き抜けるエスカレーターは、都心のオフィスビルのように洗練されている。かつてのバンカラ、田舎くさい印象はない。

 早稲田・政経にも合格していた慶應・経済3年の男性(22)はこう語る。

「早稲田だから服装や身のこなしがダサいとか、慶應だからお金持ちだとか、あまりそういう傾向はないです」

 この男性はむしろ早稲田の躍進ぶりを認めている。

「早稲田は英語の授業に力を入れていますし、グローバルな改革をしているところはさすがです。新型コロナウイルス対応も早稲田の動きは速かった。私が受験したときは、高校の同級生も慶應を選ぶ人が多かったので、変わったものです」

 市村さんは言う。

「ダブル合格データはあくまで一部の受験生の結果ですが、早稲田の好調ぶりは明らかで、その動きは今年だけにとどまらないと思います。早稲田は近年、積極的に改革を進めてきました。その成果がようやくでてきた。これまでの慶應圧勝の状況に早稲田が待ったをかけ、早慶対決が新たなフェーズに入ってきたのではないでしょうか」

司法試験で慶應が逆転

 大学通信の安田賢治常務取締役は、こう振り返る。

「昭和は早稲田、平成は慶應の時代でした」

 昭和のころ、早稲田は学部によっては東大の偏差値と同等だった。「第1志望が早稲田、第2志望が東大」という受験生もいた。それが、平成になると慶應に流れが変わった。何があったのか。

 慶應は1990年、湘南藤沢キャンパス(SFC)を開設し、幅広く学べる学際系の学部を設置した。国内で初めてAO入試(現・総合型)も導入した。

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