AERA 2021年11月29日号より
AERA 2021年11月29日号より

「はたから見れば、あれだけすごい成績を残したのにと思いますが、そこはやっぱり本人にしかわからない、数字とかではなく目指していたものがあったんだろうなと感じました」

 村主さんは14年に引退。卓越した表現力で観客を魅了してきたが、自身としては「最善を尽くしたのに五輪の表彰台に上がれなかった」という心残りがあった。その思いは他の人にはわからないだろう、という。

「でも、(松坂選手が)そこ(目指すもの)に向かう姿勢を多くの人たちが見て、心を打たれてきたんだと思います」

 村主さんは現在、米国のラスベガスを拠点にフィギュアスケートの振付師の仕事をしながら、映像制作など活躍の場を広げている。

「小さいことから大きいことまで、無理難題が毎日のように降りかかってくるけど、40歳は通過点。まだまだこれからじゃない?と思う。松坂さんは『(自分の)諦めの悪さをほめてやりたい』と言っていましたが、私も諦めが悪いってよく言われるんです(笑)。松坂世代として、諦めの悪さを発揮していきたい」

「根性論最終世代」の私たち。それぞれが現在地に見合った「全力投球」の形を見つけ始めている。(編集部・高橋有紀)

AERA 2021年11月29日号より抜粋