写真はイメージです/gettyimages
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 この数年、医療や教育現場で「きょうだい児」という言葉を聞くようになりました。

 きょうだい児とは、病気や障害のある子どもの兄弟姉妹のことであり、我が家で言うなら健常の次女です。子どもに病気や障害が見つかると、保護者は病児のことで頭がいっぱいになり、他のきょうだいの世話が充分にできなかったり、通院のためにきょうだいとの時間が減ったり、きょうだいの寂しさに気づく余裕がなくなってしまうなど、きょうだい児はメンタル面での負担が大きいと言われています。今回は、きょうだい児についての話です。

■次女が心を閉ざしていった

 私が初めてきょうだい児という言葉を意識したのは、次女が小学4年生の時でした。

 この年の夏休み、息子が足の手術をするために都内の病院に6週間入院しました。病院は一定期間の付き添いが必要であり、重心児の長女はリハビリ目的で一緒に入院できることになりましたが、次女は連れて行けません。昼間は私の両親に頼み、夜間は夫とふたりで過ごすことになりました。

 入院日が近づくと、次女の口数は減り、買ったばかりのペンケースを壊してしまったり、頻繁にじんましんが出たりとメンタルに不調が出始めました。今思えば必死のSOSだったはずですが、当時の私にはどうすることもできず、私が「仕方ないよ」と言うたびに無表情になり、次第に誰に対しても心を閉ざしていきました。

■担任の先生に相談

 どうすればよいのかわからず、次女の1~2年の担任だったりょうこ先生に相談してみることにしました。りょうこ先生は、次女のクラスの担任から息子の学年の主任先生となったため、担任を離れてからも次女の近況をよく話していました。さらにインクルーシブ教育にも関心を持ってくださり、私にはとても心強い存在でした。

 数週間やり取りをした結果、りょうこ先生はわざわざ息子の入院先まで、次女が面会に来る日に合わせてたくさんの差し入れを持って来てくれました。そして、子どもたちそれぞれに合う本や漫画やお菓子を渡し、一緒に1学期の成績表を見て話し、次女が和んだところでこんな提案をしてくれました。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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