ジュフリーさんは米国の裁判所に提出した書類で、「実際に性交渉した人」としてアンドルー王子の名前を出した。王子はすべて否定していて、彼女のむき出しの腰に手を回した01年撮影の写真は合成で、彼女と会った記憶はないと強調する。19年、王子は疑惑を一掃しようとBBCの番組「ニューズナイト」に登場した。記者の質問に答えたが、あまりの荒唐無稽さに、非難と嘲笑の的になった。

■後悔の言葉はなし

 ジュフリーさんが「王子と共にいた」と話した夜は、王子はピザエクスプレスでのパーティーに娘を送っていったとしたが、裏付ける証人はなかった。二人がダンスをしたとき「王子は汗だくだった」というジュフリーさんの言葉に、「当時アドレナリン治療で汗をかくことはなかった」という王子の反論には医師から疑問が出ている。国民が最悪としたのは、少女たちへの心からの同情、犯罪者との交流への後悔の言葉が王子の口から聞かれなかったことだった。

 米連邦地裁当局は、王子に米国での聴取に出頭するよう呼びかけている。王子は「全面的に協力する」としながら、応じていない。女王が避暑で滞在するスコットランドのバルモラル城にセーラ元妃と逃げ込むありさまだ。裁判文書を受け取っても、提出の仕方に不備があったとして出廷義務はないと王子の弁護士側は主張している。

 さらに、チャールズ皇太子(72)にもスキャンダルが持ち上がった。皇太子の慈善団体に約2億円の寄付をしたサウジアラビアの富豪に見返りとして、英国市民権と勲章を与えるよう取り計らったという。責任を取って皇太子の側近が一時的に解任、皇太子は「認識がなかった」と弁明した。国民は、ロイヤル兄弟の心の弱さと志の低さを嘆く。女王崩御の際には、ウィリアム王子(39)の戴冠を望む声がまた一段と高まりそうだ。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2021年9月27日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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