——8月からシーズン2が放送されるドラマ「来世ではちゃんとします」への出演や、女性化粧品ブランドのキャンペーンモデルなど、多方面で活躍を続ける。そんななか迎えたデビュー10年目、下した決断は世間を驚かせた。デビュー以来所属していた大手事務所を円満退社しフリーとなったのだ。なぜか。

■作品のピースの一つに

塩野:人生は一度きりなので、自分が後悔のないように生きたいというのが素直な気持ちです。いろいろなことを怖がっちゃいけない。……いや、めちゃめちゃ怖かったんですけど。どちらかというと、これまではお世話になっていた事務所でずっと頑張っていくんだ、という気持ちの方が強かったんですが、コロナ禍で、さまざまな価値観が転換していく時代に、自分自身の生き方について考える時間が増えたことも大きかったと思います。

 それから、やっぱり10年目という節目です。お世話になった方に「男は10年をめどに花咲かせよう」という言葉をもらって頑張ってきたんですが、自分としてはまだ満足できる花を咲かせられていないと感じたので、原点に戻って新しい一歩を踏み出したくなったんです。

 フリーとして活動して改めて感じたのは、以前の事務所の優しさでした。そんな僕の思いを突っぱねずに受け入れてくれて、今もいい関係が築けている。感謝しかありません。これからもまわりの人を大切にしたい。今は全部自分でやっているので大変ではありますが、それは体験しておくべきことだろうなと思っています。結果はあとからついてくる。今はそれを信じて頑張りたいですね。

——目標は「この人が出る作品を見れば間違いない」と思われる俳優になること。黄色い歓声が上がる作品も「いまは両手を広げてウェルカムです」と笑う。

塩野:僕自身は、泥臭かったり汚かったり、窮地に立った時に出る人の本性とか、そういうものにフォーカスした作品が好きですし、演じたいと思っています。自分自身が追い詰められるような作品にはまだ出合ってないので、ぜひ挑戦してみたい。それが新たな「転機」になってくれたらうれしいですね。それと、「純情キラキラど真ん中」みたいなラブコメは、意外とないのでやってみたい(笑)。作り手の愛が感じられる、「観て良かった」と思える作品のピースの一つであり続けたいです。

AERA 2021年8月2日号