米同時多発テロから1年後、アフガニスタンのバグラム米空軍基地で訓練を繰り返す米兵たち/2002年9月11日 (c)朝日新聞社
米同時多発テロから1年後、アフガニスタンのバグラム米空軍基地で訓練を繰り返す米兵たち/2002年9月11日 (c)朝日新聞社

 バイデン米大統領は「米史上最長の戦争を終わらせる」とし、8月末には米軍のアフガニスタンからの撤収が完了する。アフガン撤収と、予想される日本への影響、そして米国の対応について、米国在住の軍事社会学者・北村淳氏がAERA 2021年7月26日号で綴った。

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 バイデン米大統領は、米軍によるアフガニスタンでの軍事作戦を予定よりも少し早め、今年8月31日をもって完全に終結させると正式に表明した。

 そもそもアフガンへの侵攻は紀元前のアレクサンドロス大王にとっても、チンギス・ハーンにとっても大障壁となっていた。19世紀になると、当時軍事的に最盛期であった英国が2度の侵攻を企てたがともに失敗に終わり、アフガンを軍事的に掌握することの困難さは西洋諸国に鳴り響いた。

■莫大な戦費と戦死傷者

 ヒトラーの世界制覇計画では、ヨーロッパ方面から侵攻するナチス・ドイツ軍と、中国方面から侵攻してくる日本軍が、最後の難関アフガンを挟み撃ちにして合流するという話もあったほどだ。

 1970年代から80年代にかけてソ連がアフガンに侵攻したものの、米国のベトナム戦争と同じく、戦況は泥沼化して、結局ソ連軍は撤収を余儀なくされたのだった。

 このように、国内の民族・部族構成や、宗派対立、それに複雑な地形などが相まって、アフガンへの軍事介入は必ず墓穴を掘る結果になることは、歴史が雄弁に物語っていた。

 それにもかかわらず、2001年9月11日の同時多発テロに激高した米国は、アフガンへの軍事介入を開始してしまったのだ。その後20年もの長きにわたってアフガン戦争を継続したものの、莫大な戦費と戦死傷者を出しただけで、何の成果を上げることなく、米軍は撤収することとなったのである。

 ちなみに米CNNなどによると、米国がアフガン戦争につぎ込んだ費用は約2兆ドル(約220兆円)以上にのぼり、米軍だけで2400人以上の戦死者と2万人以上の負傷者を出した。米国の民間軍事会社の関係者の戦死者は3800人を超えている。

 米軍のアフガンからの撤収が、日本に直接影響を及ぼすことはない。

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