■目指すのは深い学び

 その結果を受け、イエナプラン校の具現化前から、七つのパイロット校を中心に異年齢での学習に取り組み始めた。イエナプランを導入する常石小学校は今後、その教育のモデルケースになる。三好教育長は言う。

「私たちが目指すのはイエナプランそのものではなく、深い『学び』です。全市で取り組んでいるので、教員が異動しても、経験が生かせると思います。『学び』の追求は、長い時間をかけて育てる取り組みです。『福山100NEN教育』は、この一点に集中しています」

 イエナプランに限らず、私立校では新たな選択肢となりうる教育の場がわずかだが増えつつある。だが、子どもたちの圧倒的多数は公立校で学ぶ。そして、公立校でも入学時点で家庭の経済状況や教育への考え方によって、大きな「差」が存在する。その「差」は本来、公教育のなかで解消されるべきものだ。

 子どもが主体で、それぞれのペースで自立的に学んでいく。できる子だけが勝ち残るのではなく、一人ひとりを取り残さない。そんな教育は、公立校にこそ必要なものと言えるだろう。(編集部・小長光哲郎)

AERA 2021年6月21日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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