白石康次郎「ヨットが下手」でも「好きなこと続けた」 世界一過酷なヨットレース完走の舞台裏 (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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白石康次郎「ヨットが下手」でも「好きなこと続けた」 世界一過酷なヨットレース完走の舞台裏

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2020年11月8日、ヴァンデ・グローブのスタートを切る白石康次郎。ここから3カ月をかけて世界一周し、21年2月11日にこの場所へ戻ってきた(写真:KS Racing/Yoichi Yabe)

2020年11月8日、ヴァンデ・グローブのスタートを切る白石康次郎。ここから3カ月をかけて世界一周し、21年2月11日にこの場所へ戻ってきた(写真:KS Racing/Yoichi Yabe)

白石康次郎(しらいし・こうじろう)/1967年生まれ。海洋冒険家、外洋セーリングチーム「DMG MORI Sailing Team」スキッパー。これまで、ヨットで4度の単独世界一周を経験。4年に一度開かれる世界最高峰のレース「ヴァンデ・グローブ」には2016-17年に初参戦(途中リタイア)、2020-21年大会でアジア人初の完走を果たした(33艇中16位)(撮影/写真部・高野楓菜)

白石康次郎(しらいし・こうじろう)/1967年生まれ。海洋冒険家、外洋セーリングチーム「DMG MORI Sailing Team」スキッパー。これまで、ヨットで4度の単独世界一周を経験。4年に一度開かれる世界最高峰のレース「ヴァンデ・グローブ」には2016-17年に初参戦(途中リタイア)、2020-21年大会でアジア人初の完走を果たした(33艇中16位)(撮影/写真部・高野楓菜)

 今年2月、海洋冒険家の白石康次郎が単独無寄港・無補給で世界一周するヨットレース、ヴァンデ・グローブを完走した。世界一過酷というレースに挑み、目標を果たした今、何を思うのか。AERA 2021年5月24日号から。

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 みぞれ混じりの冷たい風のなかで、万感を込めて両腕を突き上げる。2021年2月11日11時52分、白石康次郎(54)はフランス西部レ・サーブル=ドロンヌで世界一過酷なヨットレース「ヴァンデ・グローブ」のフィニッシュを迎えた。単独無寄港・無補給での世界一周ゴールタイムは94日21時間32分56秒。日本人として、アジア人として、非白人として初の完走だった。

■充実して自由だった

 長い旅でした。昔と比べると、記録的には世界一周はずいぶん速くなった。それでも、忍耐力が試される粘りの冒険でした。毎日24時間態勢で、2千時間以上の連続競技。3カ月で何年分も命を燃やしたというか、人生をかけた冒険です。海の上ではひとりだけれど、さみしさは全くありません。やりたいことをやっていて、心から楽しかった。毎日生きている実感があった。僕はとても充実していて、とても自由でした。

 スタートしてわずか6日で、艇の主エンジンともいえるメインセールが真っ二つに裂けるトラブルに見舞われた。誰もが「完走は不可能」と思うなか、6日かけて修理し、再びセールを上げた。

 よく、「白石さんはなぜ心が折れないんですか」と聞かれます。でも、折れてますよ。バキバキに。僕自身、絶対完走できないと思った。前回のリタイアから4年かけて準備してきたのに、絶望的な気分です。

■再びセールが上がった

 こんなときに大切なのは、前向きになることではなくて、自分を肯定すること。「破けたけれど元気を出そう! くじけちゃいけない」ってのは、実はネガティブな考え方です。気持ちをごまかしているだけで、立ち直ることができません。むしろ、「やっちゃった、もうお手上げだ」と自分の感情を認める。そのうえで、逃げるんじゃなく、次どうしようかと考えます。

 今回は幸いにも、船体が割れたとか、マストが折れたというような命にかかわる事故ではありませんでした。完走は無理でも動くことはできる。壊れたままじゃ帰れないから、まずは修理しよう。そのあとは、行けるところまで行ってリタイアしようと思いました。


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