
4月放映開始の人気ドラマ「最高のオバハン 中島ハルコ」の原作者でもあり、作家の林真理子さん。コロナ禍でどう変わったか、その人生観は? 「AERA Money 2021春号」の巻頭インタビューから抜粋してお届けする。
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■性別関係なく「自分の米を自分で買える人」に
林さんは、朝日新聞、日本経済新聞とスポーツ紙の3紙を1時間半ほどかけて読む。
「情報の鮮度という意味ではネットにかないませんが、人間の暮らしや心の移り変わりに関わる部分を読みます。引きこもりやシングルマザーの貧困など、世相を感じる記事に目がいきます」
女性の貧困に関する記事を目にすると、歯がゆいような気持ちになるという。
「非正規雇用の仕事をしている男性と結婚したが、働かずに酒ばかり飲むようになったので離婚したという、生活苦のシングルマザーがいたとします。彼女の生活を助けてあげたい気持ちがある一方で、どうしてそんな男と結婚してしまったのか、そもそもなぜ自分で食べるすべを若いうちに身につけておかなかったのか……と」
結婚なんていつまで続くかわからないものだ、と林さんは言う。
「自分のお金で食べて、住むところを用意できる。男性も女性も、すべてここからはじまります。専業主婦の方を否定するわけではないですが、いざとなったら自分の米を自分で買えるかどうか。現状、自分で買えないのなら、稼げるようになるにはどうしたらいいか。万が一のことがあったら自分の力で生活基盤を作ることができる——、これは大事なことだと思うんです。人も、世の中も、いつどうなるかわかりません」
大学を卒業したばかりの林さんは、何も持たない若者だった。貧乏だった。
「就職試験ではコレクションができるぐらい落ちました。その後、アルバイトでも、小さい会社でも、『決まったお給料を決まった日にもらえるところ』にこだわって働きはじめました。毎月いくら入ってきて、家賃はいくらで、食費はいくら。自分の力で生きてきました」
こう振り返る林さんだが、昔からの持論は「お金は使うときに使わなきゃ」。薄毛に悩む男性に植毛をするアルバイトをしていた当時の給料が手取り9万円。貯金のほぼ全額をコピーライター養成講座につぎ込んだことを機に、林さんの才能が開花する道をたどりはじめる。