■家族のこと話さない

山崎:訓練も宇宙での活動も男女差はないのに、細かいところが男性中心に設計されているんですね。でも、欧州宇宙機関(ESA)が今年、11年ぶりに宇宙飛行士の採用を始めました。「女性と身体障害者の採用を積極的に行う」と発表して、期待しています。インクルーシブな社会に、宇宙もなってほしい。

ウィンクール:ESAで何カ月も女性宇宙飛行士の訓練をしていた人に話を聞きました。男性を訓練すると、すぐに子どもの写真とかを見せるのに、その女性宇宙飛行士は一度も家族のことを話さなかったそうです。女性の沈黙というのは、やはり男性と同等でなくてはいけないというプレッシャーがあるからではないかと思いました。

山崎:女性宇宙飛行士はまだ10パーセント。増えていくことが大切だと思っています。ただ最初は皮肉っていたマイクも訓練を重ねていくうちに、「僕たちはロボットじゃない。完璧な宇宙飛行士もいないし、完璧な親もいない」とサラに語ります。あのシーン、すごく心に染みました。世の中、男女一緒に良くなっていくといいな、この映画、男性にも見てほしいな、と思いました。

■飛び立ち考えていい

ウィンクール:女性の方が「完璧な母でなくてはいけない」と自己規制してしまっている面もあると思います。家庭も持てるし、職業も持てるし、宇宙飛行士にもなれるんだって女性に思ってほしいです。(原題の)「Proxima」は星を指しますが、スペイン語では「次」という意味なんです。娘が「次の人」になるのだから、完璧な母にならず、自分の夢をかなえてもいい。そんな意味も込めました。娘が母親のあとを継いでいくという意味でもありますね。

山崎:太陽系から最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリから取ったと思っていました。そういう意味もあったんですね。何だかうれしいです。

ウィンクール:サラは、別れた夫には娘の世話などできないと考えていました。でも、任せておけば父親は父親なりに何とかやっていく。男性に任せる、というのも女性には大切だと思います。

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