■見に来ない勇気もある

 A.B.C−Zとしての仕事も充実している。定時制高校を舞台にした学園ドラマ「ワンモア」にグループで主演したり、またParavi初冠バラエティー番組「A.B.C−Zの1000本ノック」がスタートするなど、来年のデビュー10周年を前に活躍の場を広げている。自身が考える、戸塚祥太の「現在地」とは。

戸塚:それがねぇ……いつ死ぬかわかったら、今の自分の位置がわかるんだけどなぁ。自分の現在地ってどこだろうってずっと考えながら生きていくんだと思いますよ。今回の舞台で好きな台詞があって。「今までのことは変えられないけど、これからのことは変えられる。自分が変えようと思えば、自分の未来、自分の明日は変えられる」。これは芝居を超越して、みんなに届いてほしい。この気持ちがあれば、自分の現在地なんてわからなくてもいいんじゃないかな。過去も未来もなくて、あるのは「今」だけでいい。「今」の連続でいきたいですね。

 今は舞台を見に来てくれる人も勇気だし、来ない人も勇気。しばらくこういう状況が続くと思うので、常にみんなでたたえ合いながらいきたいですね。

「明日を変える」ために、新しく始めたいことはあるか。

戸塚:三島由紀夫を理解したいですね。いや、これは俺の中に懸案事項としてあるんですよ。ずっと理解しきれないけど(笑)。あのスピリットと、ある意味での弱さ。あとシンプルに文学としてすごく美しくて。僕も言葉を意味のあるものとして機能させられる人間でありたい。いつか三島の役がきたら最高ですね。背もそんなに高い方じゃないから見た目からも近づけると思う。

 あと、最近はキーボードを弾いている時間が楽しいので、いつか「ピアノマン」みたいな役を舞台でやれたら。もし「ラ・ラ・ランド」を日本でやるなら、自分が絶対オーディションでライアン・ゴズリングの役を勝ち取ってやりますよ!

(ライター・大道絵里子)

AERA 2021年4月5日号