大木さんは地震学が専門で、防災教育も行うが、モンテッソーリ教育につながるものがあるという。

災害が起きたとき、命を守るためには自分で判断して適切な行動をとらないといけない。日本の教育は教師が教え込むことが主体になり、自分で判断させるという視点が欠けているように感じます」

■子どもをよく観察する

 折しもフランスのドキュメンタリー映画「モンテッソーリ 子どもの家」が全国で公開中だ。

 仏最古の、モンテッソーリ学校の幼稚園クラスを舞台に、子どもたちが「お仕事」を通して成長する姿、教師との温かなやりとりを美しい映像で描いている。映画を配給したスターサンズ社・社長の河村光庸(みつのぶ)さんは、映画への想いを次のように話す。

「子どもが自立するためには幼児期の教育が重要ですが、日本は小学校を教育の始まりと捉え、幼児教育を重視しません。経済効率主義、競争主義の今の時代ほど、幼児期からの個性を大切にする教育が必要です。モンテッソーリが何を大事にしてきたのか、映画を見て考えてほしい」

日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」副園長の櫻井美砂さんは、家庭でのお手伝いを勧める。

「モンテッソーリ教育に、特別な道具は必要ありません。子どもをよく観察して、洗濯に興味を示したら洗濯ばさみを留めさせたり、一緒に衣類を畳んだりしてみてはいかがでしょうか。運ぶことに興味を示したら、最初は両手でお茶わんを、慣れたらトレーに載せて運ばせてみましょう。こぼしたら、一緒に拭けばいいのです」

 不用意にせかしたり、すぐに手助けしたりせず、じっくりと待つことが大切だという。モンテッソーリが問うているのは、大人の姿勢とも言える。(ライター・柿崎明子)

AERA 2021年3月1日号より抜粋