
藤井聡太二冠も学んだモンテッソーリ教育の注目度が高まっている。イタリアの女性医学博士が約100年前に創案した教育メソッド。子どもが興味を持つことをするときの高い集中力を生かし個性を伸ばすという考え方にもとづく。子どもの活動を「お仕事」と呼ぶことも特徴的だ。AERA 2021年3月1日号は、教育現場を取材した。
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日本でもモンテッソーリ教育を採り入れる教育機関が増えている。学研塾ホールディングスと市進ホールディングスが共同で開設した「クランテテ三田」(東京都港区)もその一つ。幼児保育と小学校の学童保育などが併設されている。副校長の西村文孝さんは、モンテッソーリ教育の特徴を「全体から部分へ、具体から抽象へ」と言う。
小学校の社会科や理科につながる地理分野はこうだ。通常は身の回りの環境から地域、国、世界とフィールドを広げていくが、モンテッソーリ教育では宇宙から入っていく。宇宙の概念を幼児に理解させるため、用意するのがバケツに入った水だ。中心に墨汁を垂らし、墨汁が広がる様子をビッグバンにたとえる。そこに小さな紙くずをまき、水の分子運動で固まった紙くずを、惑星や星の誕生にたとえて伝える。
「全体を知るということは、世界の全体像を捉えるということ。各論の学びも広い視野で捉えることができます。モンテッソーリ教育は、専門的な教具を使って知識を身につける英才教育と言われることもありますが、重視しているのは、答えのない問いに向かい続ける知性なのです」(西村さん)
慶應義塾大学環境情報学部准教授の大木聖(さと)子さんは、3歳から子どもをクランテテ三田に預けている。
「息子はマイペース。決められた時間にみんなと一緒にやるのが得意ではありません。一つのことに黙々と取り組ませてくれるモンテッソーリ教育が、うちの子に合っていました」
活動のなかで、梅ジュース作りが印象に残っているという。
「3歳の子どもが爪ようじで梅のへたを取り、自分たちで作るんです。すぐ飲まずに氷砂糖が溶けたり、梅が浮かんできたりする様子を毎日観察しました」