丹羽隆史(にわ・たかし)/タニタの取締役・CHO(健康管理最高責任者)およびタニタヘルスリンク取締役会長
丹羽隆史(にわ・たかし)/タニタの取締役・CHO(健康管理最高責任者)およびタニタヘルスリンク取締役会長

 いち早く「健康経営」に取り組んできたタニタ。だが、コロナ禍で7割が在宅勤務になり状況は変わった。家にいる従業員にどのような試みをしているのか。AERA 2021年2月15日号は、タニタ取締役・CHOの丹羽隆史さんに聞いた。

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 健康の維持には「はかる、わかる、気づく、変わる」のPDCAを回すことが大切です。弊社の社員証は活動量計を兼ねていて、歩数や消費エネルギーなど、からだの状態がウェブに上がる。からだや活動の変化を可視化して本人と会社が把握し改善に努める、そういう仕組み作りをしてきました。社員食堂でのバランスの取れた食事の提供も続けてきましたが、この取り組みは出社する前提で作られたもの。7割が在宅勤務をする中、昨年は新たな課題に対する試みに取り組みました。まず決めたのは通信機能を備えた体組成計を全社員に配ること。費用への疑問の声もありましたが、体を壊して仕事ができなくなればそのマイナスのほうが大きい。在宅勤務でもオンラインでチームをつなぎ、ソフトエキスパンダーを使った運動を実施しています。

 はかる習慣を維持するには周りからの声かけも大事。1月に発売した家庭用の体重計には「おさぼり番号表示機能」をつけました。個人に番号を振り一定期間計測していない人がいれば番号が表示され、家族間で指摘できます。

 家族が体調を崩し介護が必要になれば従業員は仕事に全力が尽くせません。タニタでは従業員の家族の健康診断費用、再検査費用まですべてカバーしますし、家族を巻き込んで取り組める健康プログラムを用意しています。

 このコロナの状況下でも、家にいる従業員に対して何ができるか考える、それが本当の意味での健康経営。難しいことではなく、トップが従業員のことを考えていることを示すコミュニケーションのツールが健康経営なんです。オフィス環境を整えてスポーツクラブを使えるようにするのは福利厚生でしかない。経営者は健康経営を改めて考え直す機会にするべきです。(構成 編集部・高橋有紀)

AERA 2021年2月15日号