日本の「緩い」コロナ対応はスウェーデンに近い。感染者は少ないが一種の集団免疫を獲得しているとの見方も/11月18日、東京都新宿区 (c)朝日新聞社
日本の「緩い」コロナ対応はスウェーデンに近い。感染者は少ないが一種の集団免疫を獲得しているとの見方も/11月18日、東京都新宿区 (c)朝日新聞社

 人口の3分の2以上が感染すれば、それ以上の拡大を抑えられる「集団免疫」。日本でもすでにあると言う専門家がいる。一体どういうことなのか。AERA 2020年12月21日号は、免疫学の権威に聞いた。

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 集団免疫とは何か、改めて考えてみよう。順天堂大学医学部の奥村康特任教授(78)は「日本でも集団免疫は既にあると言っていいんです」と指摘する。奥村教授は免疫機能の最前線を守るNK(ナチュラルキラー)細胞の武器であるパーフォリン遺伝子を発見した免疫学の権威だ。

 奥村教授は、ウイルスと戦う免疫機能の役割について、常に前線をパトロールするNK細胞を「警察官」、その後に控えるT細胞(リンパ球の一種)を「地上軍」、感染やワクチン接種で身につける抗体を「ミサイル」に例えると分かりやすいという。特定のウイルスをピンポイント攻撃するミサイルだけでなく、警察官と地上軍の働きも重要なのだ。

「新型コロナに関しても、抗体がなくてもT細胞系の免疫が備わって有効に働いたという論文が既に出ています。この地上軍にはメモリー機能があり、一度戦った経験があると非常に強くなる。昨シーズンは日本も韓国も台湾も風邪が流行った。実際に風邪を引いた人のT細胞は鍛えられているから強いですよ」

 こう指摘する奥村教授は、高齢者の罹患率や重症化率が高い理由をさらに続けた。

「最前線で頑張る警察官は年を取ると弱くなる。ウイルスを撃つ拳銃は持っていても込める弾(パーフォリン遺伝子)を作る能力が落ちるからです。サプリメントやヨーグルトに含まれる乳酸菌が風邪などの予防効果をうたうのは、この弾を増やすことができるからです」

 意図せず感染した経験から抗体を得るだけでなく、T細胞やNK細胞は頼りがいのある免疫なのだ。しかも、これらは抗体検査でわかる指標ではない。NK細胞は、500種類以上あるという腸内細菌をバランスよく整えることだけでなく、ストレスのない状態を作り出すことで強化されるという。

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