そして今回、意外な方法でニザダイ特有の臭みを除去できることがわかりました。それは、網にかかったニザダイを1週間程度いけすに入れて、キャベツを食べさせること。

 2017年に、神奈川県水産技術センターで、同じく磯焼けの原因となるムラサキウニにキャベツを食べさせることで、甘みのあるおいしいウニを育てることに成功したというニュースが出ていたんです。

 そこで、同じく海藻を食べるニザダイでも同じことができるのではと考えて、農家から出荷時に廃棄するキャベツの外葉をもらってきて与えてみました。すると、期待通り、彼らはいけすに入れたキャベツも食べてくれました。

 そして一週間ほどキャベツを食べさせたニザダイをお刺身にして食べてみたところ、特有の臭みが抜けていただけでなく、なんとなく柑橘系のような香りがほんのりとするものもありました。

 身はとても綺麗な白身で、タイそっくりで、歯応えやもっちり感などはタイより上かもしれません。社内で何人かの人たちにも食べてもらいましたが、「歯応えもよくて、本物のタイよりおいしいかも」と評判は上々でした。

 くら寿司では、近々、このキャベツニザダイを地域限定、期間限定でテスト販売する予定です。その結果次第では、将来、定番メニューとして「キャベツニザダイ」がメニューにのる可能性もあります。そしてニザダイに商品価値が出て、キャベツニザダイが普通にスーパーの魚売り場に並ぶ日も遠くないかもしれません。

○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2019年11月から、執行役員 広報宣伝IR本部 本部長

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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