いけすでキャベツを与えたニザダイ(上)と、とれたままのニザダイ(下)
いけすでキャベツを与えたニザダイ(上)と、とれたままのニザダイ(下)
臭みがなくなったキャベツニザダイのお寿司
臭みがなくなったキャベツニザダイのお寿司

 突然ですが、皆さんは「ニザダイ」という魚をご存じですか?

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 といっても、おそらくほとんどの方がご存じないと思います。釣り好きの方には「サンノジ」と言ったらおわかりいただけるのではないでしょうか。尾びれのつけ根に、黒くて硬い突起が漢字の「三」のようについているので、サンノジ(三の字)と呼ばれているんです。

「ニザダイ」は、タイという名がついていますが、以前このコラムでも書いたあやかりダイの一種で、実際はスズキ目ニザダイ科になります。見た目はタイというよりカワハギっぽいと思うんですが。

 ニザダイのニザの語源は新背(にいせ)とのことで、新背とは古語で新しく大人の仲間入りをした男性のことです。青二才とほぼ同じような意味で使われているようなので、あまりいい意味ではなさそうです。つまりニザダイとは「タイの端くれ」的な意味でしょうか。

 このあまり聴き慣れない魚ですが、宮城県や新潟県以南の日本近海の水深10メートル程度の海に結構たくさん生息しています。

 そして実はこの魚は、海を荒らす魚として、駆除の対象に指定されているんです。というのも、彼らの好物はワカメなどの海藻類で、彼らが増えて海藻をどんどん食べることで、海藻が減り海が砂漠化する「磯焼け」を引き起こしてしまうからなんです。

 それならどんどん取って販売すればいいように思いますが、なかなかそうはいかない問題があるんです。

 その問題とは、ニザダイの身には独特の臭みがあって非常に好みがわかれるということ。筆者も試食で食べたことがありますが、食べた後、生臭いというか発酵したキムチのような香りが鼻に抜けて、思わず「うぇっ」とえずいてしまいました。

 おそらく、彼らが食べた海藻が胃の中で発酵して、その臭いが身に移っているんだと思います。

 漁師さんも釣り人もそのことをよく知っているので、網にかかったり釣れたりしても、「なんやサンノジか…」ということで、持ち帰ったり流通することはほとんどありません。

 筆者も岩場でグレ(メジナ)を狙っているとき、何度かサンノジがかかったことがありますが、いつもそのままリリースしていました。引きはとても強いので、釣り味は最高なんですが……。

 この海の厄介者ともいえるニザダイをおいしく食べる方法を考案すれば、漁師さんの収入増にもなり、海の環境保護にもつながり、魚好きのお客様にも喜んでいただける「一石三鳥!」と考えて、くら寿司では研究に取り組んできました。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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おいしく食べるには?