西村:基礎概念、理解力は何がベースになるかというと、身体感覚なんです。塾に入るのが4年生からだとすると、それまでの間にどういう勉強をしてきたのかが大切になります。大前提として学校の授業はしっかり聞くこと。これはじつはとても重要なのですね。「自分の思ったことはどんどん発言していいんだよ」「友だちの言うことはちゃんと聞いておくんだよ」からが勉強の出発点になるので、「うちの子は塾に行かせているし、先行して勉強しているから学校の宿題は適当にやっておきなさい」はよくない。あとは家庭内での会話も重要です。「今日学校で何があった?」の後に、すぐ「で、宿題は?いつやるの?」に親はなりがちですが、「こういうことがあって、こう思った」を引き出してあげる言葉かけをしてほしいですね。算数で言うと、近くのコンビニで構わないので、小銭をもたせて買い物にたくさん行かせてほしい。3年生でも10進数がわからない子が、近頃本当に増えてきているんです。

安浪:生活体験がないことで、勉強が理解できないケースが増えてきているなあと私も感じます。6年生の子に食塩の問題を教えていて、「水が蒸発して食塩が△%になりました。これは濃くなる?薄くなる?」と聞いたら、一緒という答えが返ってきたことがあって。「じゃあ、おみそ汁を煮詰めたらどうなる?」と尋ねても、どうなるかわからない。生活の中でお手伝いをさせていないんですよね。

西村:基礎学力は生活の中の経験がベースになります。割引セールでの買い物経験がない子に「割合(売買損益)」を教えるのは難しい。低学年の場合はとくに、生活すべてが勉強の元になっていると考えるべきなんですよ。

安浪:低学年の間は、「今からやらせておかないと乗り遅れる」も、あまり考えなくていいと思っています。3年生で塾の公開テストを受けたら算数の偏差値が28で、「中学受験は 諦めます」というご家庭があったのですが、「ちょっと待って。決めるのはまだ早いです」と。3年生の公開模試なんて教育熱心な家庭の子しか来ていないわけで、問題だってめちゃくちゃ難しい。先取りでやっている子は点数も取れるかもしれませんが、大事なのは6年生のときにどのくらいの学力がついているかですから、低学年のときに先取り学習でいい位置にいてもあまり関係ないんです。

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