安浪:西村先生は「基礎概念力」はどのようにつけさせるのがいいと思いますか?

西村:まず大切なのは、子どもの身体感覚に落として説明すること。旅人算であれば、実際に子どもを立たせて、先生と向かい合い、ヨーイドンで一緒に歩き出す。すると、どこかでドンと互いがぶつかります。その感覚を身につけさせるとか。そこから説明を始める。このように、子どもが本来もっている身体感覚に、教科内容をつなぐ作業が基礎概念力をつける「導入授業」なのだと思います。

安浪:線分図を書くなど、書く作業できちんと視覚的に落とし込むことも大事ですよね。線分図を書かせずに、式だけ書いて解かせようという塾講師は多いですから。

西村:現場の塾の先生方が導入授業の大切さをわかっていない。経営陣の一部や問題を作っている教務の一部はわかっていると思いますが、それが現場に伝わっていない。

安浪:導入授業をやってあげたくても、それをやっているとカリキュラムが追い付かない、というのもありますよね。テストに出そうな問題をやっておかないと点が取れないし。でもそれは極端にいえば「テストに出る問題を先に見せている」だけ。実力をつけることではないんですね。

西村:だからデイリーチェック(復習テスト)では点数が取れるけど、マンスリー(実力テスト)ではできなくなってしまう。

安浪:保護者もまずは目先の点数の点数が上がることを求めていたりしますから難しいところです。

西村:ところが目の前の点数取りを目指しながら、実際は目の前の点数も上がっていない子は多いんです。4 年生のうちなら基礎概念力がなくても頑張って問題を覚えきれる。ただ、その方法で5 年生を過ごそうとすると半分が落ちこぼれる。6 年生ではほとんどの子が落ちこぼれる。だからいつかの時点で思考型、理解型の勉強に変えていくかが勝負だと思っています。

安浪:中学受験をこれから考えている低学年のご家庭は、基礎力をつけるために、今から何をしておくと良いと思われますか?

次のページ