「映画会社の社員プロデューサーだったら失敗してもいいけれど、私のようなインディペンデントのプロデューサーは失敗したら後がない。明日はない、というなかでこれまでやってきた。ひたすらに勝率を上げ、勝ち続けながら生き残る。そういう世界でやってきたんです」

 最後の監督作と明言する本作への高い評価に、驚いている。

「テリー伊藤さんと松任谷由実から、まったく同じことを言われたんです。『やさしくて素直な角川さんが表れている。角川さんの本質が表に出てきましたね』と。松本穂香に言ったように、自分自身の本質、“素”って自分ではわからないんですよね」

 原作者を含め、早くも続編を願う声も多い。

「もしかしたら、『みをつくし料理帖』という枠の中でなら可能かもしれない。しかし、まずは興行成績。プロデューサーに明日はない。勝たなきゃ土俵に上がれないですから(笑)」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2020年10月26日号より抜粋