「デジタル機器が発するブルーライトは微弱で安全ですが、これだけ過剰に見つめ続けるのは人類が初めて経験していることです。1日8時間以上スマホやパソコンを使用する人は、ブルーライトカットフィルムを画面に貼る、ブルーライトカット眼鏡をかけるなどの対策をしてほしい」

 また、目の使い方についてはこうアドバイスする。

「デジタル機器の使用中は、ピントは手元、視線は画面の範囲内、まばたきが極端に減るなど、目の使い方が非常に偏っています。その結果、目と脳の緊張のバランスが大きく崩れているので、これをほぐしてあげることが大切です」

 そのためには、遠くを眺める、目をギョロギョロ動かす、目を閉じてホットタオルを当てて温めるなどが有効。さらに、目の周りの筋肉をほぐす「グーパーまばたき」、目でゆっくりとペンのキャップを追いかける「ペンさし運動」などは、簡単にできて効果も期待できるという。

「夜間の昼光色は脳を緊張させることもわかっています。ブルーライトだけでなく光を見つめ続ける現代、寝る前くらいはブルーライトを取り込まない方が無難です」(林田医師)

 脳科学者で公立諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授も、目と脳の疲れには密接な関係があるという。

「長時間作業を続けると目がゴロゴロして動きが悪くなったように感じることがありますが、実は、目が疲れたというのは脳が疲れたサインです」

 そのまま放置すると脳の疲れは蓄積し、肩凝りのように慢性化するという。そして、目の疲れを取るためにも眼球運動は大切だという。

「疲れたと思ったら、パソコンの四隅をゆっくり目で追うことで注意を分散させてみましょう。注意や集中力にかかわる脳のネットワークが活性化します。また、目を閉じたり開けたりするだけでも脳を休めることができます」

(編集部・野村昌二)

●デジタル時差ボケチェックシート
□日中、眠いと感じることが多々ある目の痛みや疲れ、乾きなどのトラブルを感じやすい

□合計1日8時間以上、テレビやPC、スマホなどの画面を見ているPC、スマホなどの電子機器を90分以上連続で使用することが多い

□紙の本や雑誌ではなく、電子書籍を利用することが多い

□寝る前にはたいていベッドでスマホを見る

□起床後、朝日を浴びる習慣がない

□首や肩が痛い、凝る

□移動時間や隙間時間はスマホやゲームをしている

□毎日適度な運動をする習慣がない

6個以上…デジタル時差ボケ
4~5個…デジタル時差ボケ予備軍

AERA 2020年9月7日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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