第2波に備え、福祉医療機構から無利子融資3億円を借りたが、返済計画を立てようにも収支の予測ができない。国の第2次補正予算にも不満がある。

「重症・中等症患者の入院の診療報酬を3倍にする措置ですが、多くの中小病院は軽症者を受け入れるのが役目なので、実はメリットがない。当院でも受け入れた陽性者39人のうち、重症は2人で、中等症5人、軽症は32人。重症者も中等症が悪化したために診ていたものです」(同)

 埼玉協同病院院長で全日本民主医療機関連合会の増田剛会長は言う。

「民間病院は赤字でも公的な補助金がない。ただでさえ厳しい経営状況にある中小の民間病院は特に、新型コロナの影響で資金が不足し、倒産の危機にも直面している。このままでは地域医療が崩壊します」

 医師アンケートでは、所属する医療機関のコロナ対応の有無を問わず、経営難や資金不足、給与減やボーナス減の声が寄せられた。

 患者が減り仕事が減ったという医師もいるが、より深刻なのは、最前線で葛藤する医師の声だろう。

「最前線で闘って、収入が減ることは許されるのでしょうか」(発熱外来などを設けている医療機関の医師/東京都/勤務医/代謝・内分泌科/30代/男)
「医療は医療者の良心でギリギリ成り立っている。これ以上の負担は無理」(感染患者を受け入れている医療機関の医師/神奈川県/勤務医/一般内科/30代/男)
「全く割に合わない。医療崩壊が迫っていることを、理解すべきです」(感染患者を受け入れている医療機関の医師/神奈川県/勤務医/集中治療科/40代/男)

(編集部・小長光哲郎、ライター・井上有紀子)

AERA 2020年8月24日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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